政治そのほか速
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――「超常法律相談所」では、弁護士資格を持つライターが、不思議なニュースやオカルトの素朴な疑問について、法律的見地から答えを見つけていく。
今回は、生霊を訴えることができるかを考えてみよう。まずは、下記のケースを想像しながら読んでみていただきたい。
都内の会社に勤務する甲野太郎と乙野花子は職場の同僚で、結婚を約束して親密に交際していた。ある日、同じ職場に丙野月子が中途採用で赴任してきた。月子はイケメンの太郎に一目惚れし、太郎は月子の猛アタックに根負けして、花子との交際を継続しつつ月子とも親密に交際するようになった。
ある晩、花子は大学時代の友人たちと食事しに繁華街に行った帰途、ラブホテルから手を繋いで出てきた太郎と月子を目撃してしまった。花子は、ひどい精神的ショックを受けた。「結婚を約束した私がいるのに…」と太郎を怨み、太郎を略奪した月子のことも怨んだ。
花子が仕事で海外に出張していたある晩、太郎と月子は、花子が国外にいるのをいいことに、太郎と月子は2人で一緒に夜を過ごしていた。そのベッドの横に、どこから入ってきたのか、白い着物姿の花子が、日本刀の抜き身を携えて立っていた。白装束の花子は、「これが私の怨みだ」と絞り出すような低い声で静かに言うと、携えていた日本刀で、2人の体の一部を切断した。
太郎と月子の絶叫を聞いて部屋に入った近所の人は、全裸でのたうちまわる2人を発見したが、警察の事情聴取に対して「2人のほかに人はいなかった」と証言した。
花子は、2日後、ベトナム出張から帰国した。出張中は職場の後輩の女性社員と常に行動をともにしており、後輩は、花子の所在が分からなくなることはなかったという。2人を襲ったのは、花子の生霊だった。
■花子の刑事責任を追及できるか?
残念なことに、花子を傷害罪(刑法第204条)で処罰することはできない。花子は、太郎と月子を襲っていないからである。花子は、太郎と月子を激しく怨んではいたが、「怨む」という外形的行動に表れていない内心の意思を原因としてその人を処罰することはできない。刑法で処罰されるのは、人の「行為」である。行為とは、「行為者人格の主体的現実化としての身体の動静」である。
では花子が、(呪術を用いる等)自らの意思で生霊を現出させて、太郎と月子を襲った場合はどうであろうか?この場合も、花子は処罰されない。この場合は、講学上は、行為者が、本来犯罪を完成させる危険性を含んでいない行為によって犯罪を実現しようとする場合であり、「不能犯」とよばれる。…
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