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◇「杉本ばら園」園主 杉本正樹さん 39
明るいピンクやアンズ色の花びらが、幾重にもぎゅっと詰まっている。花形は丸みを帯び、香りは甘くて強い。
「究極のバラ」ともたたえられるイングリッシュローズ。「存在感があるでしょう」。竜王町山之上の「杉本ばら園」2代目園主は、誇らしげに笑った。英国の育種会社「デビッド・オースチン・ロージズ」が生んだ希少品種。日本で栽培ライセンスを持つ生産者は、2人しかいない。
田園に立ち並ぶガラスの温室で、30種を超える切り花用のバラを手がける。室内には、暖房と除湿用の機器やパイプが配置されている。
「バラほどぜいたくで職人泣かせな花はないですから」。室温は二十数度、湿度は70%程度に保つ。そうでないと、発育不良に直結する。水やりには、地下130メートルからくみ上げた質の安定した水を使う。見回りは1時間置き。「手をかけるからこそ高級感が出る。それが面白さです」
目指すのは、花、葉、茎のバランスが取れた「三位一体」のバラ。一輪挿しでも映え、全国の品評会で何度も最優秀賞に輝いている。
◇自信を持って進めよう
温室は幼い頃の遊び場で、バラとともに育った。大学は夜間の学部に入り、昼間は園内で父重幸さん(68)の仕事を手伝った。卒業後は、迷うことなく職業として選んだ。
イングリッシュローズの栽培を始めたのは2011年。行き届いた品質管理がロージズ社の目に留まり、ライセンス契約を持ちかけられて応じた。温室に日照不足を補う照明まで入れ、丹精込めて咲かせた。だが、卸先である京都の市場では、なじみのない花だとして敬遠された。
12年に父の後を継いだ。翌13年、取引の場を東京に移した。「これで駄目なら栽培から手を引く」と覚悟を決めた。市場に花を飾り、生花店にもバランスの良さやボリューム感を確かめてもらった。
次第に専門誌に取り上げられ、注文や同業者の視察依頼が増えていった。「ただ卸すのではなく、自分で作った商品を自信を持って薦めていこう」。希少品種との出会いが新たな道を示してくれた。
バラの魅力を多くの人に伝えたい。ばら園の見学者に対し、「ざっく薔薇(ばら)んトーク」の場を設けたのは、そんな思いからだ。「クレオパトラもバラを浮かべた風呂に入ってたんですよ」といった調子で、効用や歴史を語って聞かせる。
業界は近年、2月14日に男性から女性に花を贈る「フラワーバレンタイン」の普及に力を入れている。自身も一昨年、バラの花束を手に、妻の昌子さん(33)にプロポーズした。差し出したのはもちろん、イングリッシュローズだ。「花束で滋賀を愛妻県ナンバーワンに」と願い、この時期の出荷量を増やしつつある。
一方で、こんな理想もある。「何かの節目だけでなく、日頃から気軽に花を飾ったり贈ったりする習慣を根付かせたいんですよね」。花の話になると、少年のように瞳が輝く。(小野圭二郎)
◇杉本ばら園(0748・57・0451)は1971年創業。栽培面積は約5000平方メートルで、年間約40万本を出荷している。「日本ばら切花品評会」で99年に内閣総理大臣賞、2003、05、10年に農林水産大臣賞を受け、皇室にバラを献上した。