政治そのほか速
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◇津波から飲み水守る
和歌山市水道局技術主査の大亦理広(おおまたまさひろ)さん(43)が、津波や局地豪雨の際、水道管に汚水が入らない構造になった空気弁の部品を考案し、特許を取得した。きっかけは東日本大震災で被災した福島県南相馬市の職員から「津波で飲み水が利用できなくなった」という話を聞いたことだった。大亦さんは「空気弁は全国各地で使われている。災害への備えの一つとして各自治体で採用を検討してもらえれば」と話す。(梨木美花)
空気弁は、地中に埋設された水道管の上部に取り付けられ管内の空気の出し入れを調整する。水道管は地形の起伏に応じ湾曲した形をした箇所があり、中に空気がたまって水の流れを妨げることがある。空気弁はそれを逃す「空気穴」の役割を担う。
また、何らかのアクシデントで水道管の1か所に穴があいた場合、管内で急激な圧力変化が起こり、別の箇所で多発的に破裂が生じる恐れがある。こうした危険に対し、空気弁があれば、最初の破裂時に外部の空気を即座に取り込み、二次的な破裂を防ぐのにも役立つ。
通常、空気弁は路面に小さい穴を掘り、配置するための区画が用意されている。一定量の雨なら、問題なく区画外に雨水を排出するが、東日本大震災の大津波では区画が汚水で一気に満たされ、空気弁を通った汚水が水道管内に入り、飲み水にも影響するという問題が生じた。
大亦さんは、この話を聞き、既存の空気弁の改良に着手。アイデアを練り、区画が汚水や雨水で満たされそうになった時、水に押し上げられたボールが栓の役割を果たす構造の部品を思いつき、設計書にまとめた。
以前から交流のあった空気弁メーカーの千代田工業(滋賀県愛荘町)や明和製作所(和歌山市)にも相談。軽くて頑丈なステンレス製のボールを取り付けた新しい空気弁を完成させた。特許は昨年11月に取得した。
これまでに県内では広川町、県外では大阪府富田林市、泉大津市などが大亦さんらが手がけた空気弁を購入している。和歌山市は設備の更新時期を迎えておらず、今はまだ採用していない。値段は管の大きさによって異なるが、最も一般的な25ミリのものだと一つ約9万円。広く普及させるため、従来品とほとんど変わらない価格設定にした。特許実施料はまず和歌山市に入り、一部が大亦さんに渡るという。
大亦さんは「災害時に水道水が使えなくなれば、被災者の生活は大変不便になる。今以上に機能的な姿が実現できないか、これからも研究を重ねたい」と張り切っている。