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<映画として面白いことを優先するということ>「アメリカン・スナイパー」は礼賛でも反戦でもない戦争映画

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<映画として面白いことを優先するということ>「アメリカン・スナイパー」は礼賛でも反戦でもない戦争映画

 <映画として面白いことを優先するということ>「アメリカン・スナイパー」は礼賛でも反戦でもない戦争映画

 高橋秀樹[放送作家]
 
 * * *
 
 1955年生まれの筆者の世代にとって、クリント・イーストウッドは西部劇のガンマンを演じる役者である。
 
 ・『ローハイド』(1959~1965・米CBS)
 ・『荒野の用心棒』(1964・セルジオ・レオーネ監督)
 ・『夕陽のガンマン』(1965・セルジオ・レオーネ監督)
 
 ・・・などなど。
 
 その後、最後の西部劇とも言われる『許されざる者』(1992)を監督兼主演で制作、加えて『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)の両作品はアカデミー賞監督賞、作品賞。『マディソン郡の橋』(1995)や『ミスティック・リバー』(2003)では、文芸性の高い作品も監督する。
 
 押しも押されもせぬ大監督なのだが、2007年の『硫黄島からの手紙』で、監督としてクレジットされるクリント・イーストウッドの名前を見ても、筆者には違和感があった。
 
 イーストウッドは「他の顔」も持っている。1986年にはカリフォルニア州カーメル市の市長に就任、政治活動への参加も積極的である、といった「顔」だ。朝鮮戦争・ヴェトナム戦争・テロとの戦い・イラク戦争などの「アメリカの正義」である戦争に反対するリバタリアンは、カリフォルニア州公認の共和党員でもある。
 
 現在84歳。そのイーストウッドが、イラク戦争の実話に基づく映画を撮った。その映画「アメリカン・スナイパー」を観た。日本の映画評論家はこぞって5つの星を与えている評判の高い映画だ。主人公はイラク戦争で160人を殺害したレジェンドと呼ばれる実在の狙撃兵。
 
 先行公開されたアメリカでは、「ものすごい論争が起こった」と、パンフレットに書いてある。
 
  「9・11テロをテレビで見た狙撃兵はすぐその後のカットはイラクに立つ狙撃兵の姿に変わる。イラクと9・11テロは何の関係もないのに」
 
 と著名なジャーナリストが言う。マイケル・ムーア監督は、
 
 「狙撃兵は卑怯だ.英雄じゃない」
 
 という。ムーア監督には、狙撃兵がヒーローとして描かれた映画だと思えたのだろう。もちろん反論もある。元副大統領候補サラ・ペイリンは、
 
  「英雄たちの墓に唾を吐くハリウッドのサヨクども! あんたらにはカイル(狙撃兵)の靴を磨く資格もない」
 
 さて、筆者はこの映画を観て、どう思ったか。
 
 筆者は、戦争映画を見るときに決めているルールがある。それは、
 
  「戦争映画はどちらが正しいかというと言う視点では絶対に、見ない。なぜなら、戦争か愚かなだけだからである。…

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