彼女は少し黙った後、呟いた。

　「私、ＡＶ行くんだよね」

　私は何も言えずにいた。若い彼女の夢を私たち大人が、まるで雑草かのように踏みにじる様な気がした。

　雑草だって生きている。潰す必要なんて本来無いのだから。

　「でも…芸能人で売れるのが夢なんじゃ…」

　精一杯の言葉だった。止める言葉も見つからない。

　私は、この世界に入って更に無力になってしまったように思う。

　「うん。でももういいの。

　新しい道に進む。決めたから。でも、あなたは私の為に泣いてくれた初めてのマネージャーだよ。

　最初で…最後の…ね。初めてだよ、こんな事。いつも物以下に扱われて来た私に、泣いてくれる人なんて。

　だから、お願い。私は自分で選んだ道、でもこれから出逢う女の子には、夢を与えてあげて欲しい。

　芸能界はブラックなだけじゃないって事を、あなたに証明して欲しいの」

　まるで親友がアイナの中に居るように感じる。まるでヴィーナスのように見えた悲しき天使だった。

■東條ナナ（とうじょう・なな）　１９８８年６月２０日生まれ。上海復旦大学留学。２０１０年１２月モバゲー内小説コーナー２３万作品中全国１位の殿堂入りをきっかけに学研パブリッシングより「ナンバーワン」上下巻を出版。テレビ東京「ゴットタン」。「ＦＬＡＳＨ」グラビア撮りおろし、週刊実話、漫画ナックルズ。ニッポン放送「上柳昌彦ゴゴバン！」ゲストほか。公式ブログ　ｈｔｔｐ：／／ａｍｅｂｌｏ．ｊｐ／ｎｙａｎ２ｅｔｕｃｈａｎ／　も要チェックだ。