http://mainichi.jp/feature/news/20150214k0000e040200000c.html
◇事前届け出制度を導入方針 近畿で初
琵琶湖の水源となっている森林を守るため、滋賀県は民有林の土地売買などの事前届け出制度を導入する方針を固めた。
17日開会の2月議会に関連条例案を提出する。県面積の約46%に相当する民有林約18万4000ヘクタールのほとんどが対象。
県は「森林を守ることで、近畿1450万人の水源・琵琶湖の保全につなげたい」としている。
事前届け出制度は、売買契約などを結ぶ30日前までに売り主が県に対し、買い主の氏名や住所、取得する土地の面積、
利用目的などを届け出る仕組み。県は必要に応じて立ち入り調査や関係者への聞き取りをして、保水機能を維持するための
助言や指導をする。
利用目的があいまいだったり、乱開発や無秩序な伐採が懸念されたりする場合は契約成立前に指導する。
無届けや虚偽届けには5万円以下の過料の罰則がある。
2012年施行の改正森林法は、売買や相続などで森林を取得した場合、90日以内の届け出を義務付けている。
ただ、問題が発生した場合の行政指導などが主目的で、不透明な取引をけん制することまでは想定していない。
このため、事前届け出制度は「不可解な取引の未然防止につながる」(市域の67%が森林の甲賀市)など
県内市町からも歓迎の声が上がる。
同様の制度は近畿で初めてだが、全国では15道県で条例化されている。背景には外国資本による買収への警戒感がある。
林野庁によると、外国資本による森林買収は06~13年、9道県で計980ヘクタール。多いのは別荘用地などだが、
転売目的や利用目的が不明なものもあるという。
外国資本による森林取得が906ヘクタールと全国一多い北海道では、購入先の外国資本と連絡が取れないケースもあり、
12年に水源地に限って事前届け出制度を導入した。その後、外国資本による水源地の土地取得はなく、
北海道は「道を挙げて水源林を守る、という意思表示になったのではないか」としている。
ただ、滋賀県の条例案策定に携わった県森林審議会長の栗山浩一・京都大教授は
「国籍や利用目的で規制するのが目的ではない」と強調。
「森林の公益性を所有者に理解してもらい、健全な状態で維持するため、特に琵琶湖を抱える滋賀県では重要な条例だ」と話している。