政治そのほか速
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「生意気だ」。1月中旬の未明の住宅街。殺人容疑で逮捕されたリーダー格の少年(18)は、中学1年の上村遼太さんを正座させ、約10分間、殴り続けた。その場にいた10人近くのうち1人が止めて終わったが、上村さんの頬は腫れ上がり、顔立ちが変わるほどだった。目の周りには痛々しいあざが残った。
■欠かせないツール
暴行の理由は、無料通信アプリ「LINE(ライン)」の返事が遅かったという些細(ささい)なことだった。上村さんはこのころから「グループを抜けたい」と思うようになる。
事件に関係する少年たちの主な連絡手段は、LINEだった。一方で上村さんがSOSを発していたのもLINEだ。殺害される数日前、「殺されるかもしれない」と同級生の女子生徒にメッセージを送っていた。「無料通話もあり、LINEは少年、少女に欠かせないツールとなっている」と捜査幹部。3少年の逮捕の決め手の一つになったのもLINEの通信記録だった。
今回の事件では、短文投稿サイト「ツイッター」の投稿も問題となった。事件発覚の数日後には、《見つけたらすぐ連絡ください》と記載された顔写真付きの投稿が出回った。投稿は根拠もなく「犯人」として複数の人物を名指し。さまざまなサイトに転載され、まるで既成事実であるかのように流れた。
■少年事件の“温床”
最近の少年事件の多くに、ネットのツールが関わっている。
平成25年6月に広島県呉市で高等専修学校の女子生徒=当時(16)=が殺害された事件では、LINE上での口論をきっかけに、無職少女ら7人が元同級生の女子生徒を乗用車に監禁し、現金を強奪して殺害した。20年10月には、約3カ月前に同級生から「プロフ」と呼ばれるサイトに悪口を書かれた、さいたま市立中学3年の女子生徒=同(14)=が自殺した。
警視庁の26年の調査では、高校生の82・9%、中学生の約半数がスマートフォンを所有。ツイッターやLINEなどソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)は中高生にとって身近なものになっている。
こうしたツールによる人間関係は、「友達の友達」や、設定によっては全く知らない人物にまで広がる。
少年問題に詳しい立命館大大学院の野田正人教授は「昔は目の前の子供をしっかりと見ておけば行動範囲や人間関係が認識できたが、ネットの普及で交友関係の把握が難しくなったのは事実」と指摘する。
大人の知らないところで、子供たちはいつの間にか、ネット上で交友関係を広げているのだ。
■心の本質理解重要
いじめや過度の依存など、少年のネット利用についてはさまざまな切り口で分析され、その都度、情報モラル教育の必要性が指摘されてきた。
文部科学省は30年度以降に教科化される小中学校の道徳の学習指導要領について、「情報モラル」の指導を「留意する」から「充実する」とした改定案を2月4日に公表。教師や保護者自身がネットの知識を学ぶことや、「学校裏サイト」などネット情報を定期的に収集すること、子供と携帯利用のルール作りをすることなども呼びかけている。
少年犯罪で問題となるネットの利用。ネット社会にどう向き合うべきなのか。
野田教授は「ネット世界の方法論を追求するだけではいたちごっこで、対策として不十分」と注文を付けた上で、指摘した。
「一番大切なのはトラブルに遭っている子供たちの心をつかめているかどうかだ。心の本質を理解できていないのに行動を監視するのは無理がある。様子がおかしいと周りの大人が気付くこと、子供の方から打ち明けてくれるだけの信頼関係を持つことの重要性は、結局昔から変わらない」