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「旭化成は車載用リチウムイオン電池の部材の受注に慎重」──。こんな業界の評判を一気に吹き飛ばす発表だった。
2月23日、同社が、セパレーター(絶縁材)と呼ばれる電池の主要部材の大手、米ポリポア・インターナショナルの買収に合意したというのだ。
ポリポアが医療・工業用の膜事業を米スリーエムに売却した後、全株式を取得する。その額、およそ22億ドル(約2600億円)。旭化成最大の買収案件となる。
ポリポアは、ガソリン車やフォークリフトなどに積まれる鉛蓄電池用と、電気自動車や家電製品、動力工具などに積まれるリチウムイオン電池用の2タイプのセパレーターを手掛ける。
鉛蓄電池用も、新興国でのガソリン車の普及などに伴って堅調な売り上げが望めるものではある。ただ、業界の目が集中しているのは、何といってもリチウムイオン電池用のセパレーターだろう。
リチウムイオン電池はこれまで、ノートパソコンやスマートフォンなど、民生の電気機器に採用されて市場が拡大してきた。
しかし2017年以降、自動車メーカーがプラグインハイブリッド車を含む電気自動車のラインアップを増やしてくる。リチウムイオン電池の部材各社は、民生電器に比べて桁違いに多くの電池を使う自動車の需要を逃すまいと、受注に向け、水面下で熾烈な競争を繰り広げている真っ最中なのだ。
2種類の商品を持つ意味
「次なる成長の核となるものとして事業展開してきた」
浅野敏雄社長がこう語るように、旭化成はリチウムイオン電池のセパレーターに注力してきており、シェア1位を誇るとされる。だが、同社が得意とするのは民生電器用のセパレーターだ。車載用については、「電気自動車の市場が立ち上がるまで様子見しているのでは」と、ライバル企業から冒頭のような声さえ漏れ聞こえていた。
今回の買収の狙いは、ずばり車載用のてこ入れに他ならない。
ポリポアはリチウムイオン電池のセパレーターの中でも車載用に強く、米テスラ・モーターズに電池を供給するパナソニックと共同開発も行っている。車載用に関連する「特許も魅力だったのだろう」(部材メーカー幹部)。
提案の幅も広がるはずだ。リチウムイオン電池のセパレーターは、製法によって大きく2種類ある。旭化成は高容量化などが売りの湿式、ポリポアは低コストなどが売りの乾式に強い。「湿式と乾式、両方に強い企業は他にない」(競合メーカー幹部)ため武器になる。
ただし、「果たして2600億円に見合う買い物なのか」という声が複数あるのも事実。ライバルなどから生じるこうした疑問をはね返すには、一刻も早く自動車の“主要銘柄”で受注を獲得するしかない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)