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◇電力システム改革の第1弾
全国規模で電力融通を監視、やりくりを指揮する「電力広域的運営推進機関」(広域機関)が4月1日に発足する。電力不足が懸念される地域があれば、別の地域の電力会社に送電を指示する強い権限を持つほか、長期的な送電網の整備計画を策定する。電力自由化で新規参入事業者の増加が見込まれるなか、広域機関は業界の調整役を果たし、安定的な電力供給体制を維持する重要な役割を担う。
広域機関は2020年までの3段階で実施される電力システム改革の第1弾。東日本大震災で首都圏が深刻な電力不足に陥った反省から、全国的な電力融通を強化する目的で設置される。大手電力会社や新規参入の電力事業者(新電力)など約600社が加盟を義務づけられる。
災害などの緊急時には全国規模で電力を機動的に利用する必要がある。広域機関は、電力供給に余力のある電力会社に、電力不足の地域への送電を指示する役割を担い、指示に従わない電力会社には制裁金を科す権限がある。また、各事業者の今後10年間の電力需給見通しや発電所の建設計画をとりまとめ、全国規模で安定的な需給態勢を確保する役割を果たす。
これまで電力大手が担っていた送電網の整備計画立案や、負担割合の割り当ても広域機関の役割だ。震災直後、西日本は供給余力があったものの、送電線の容量が足りず、東日本に十分な電力を送れなかった。電力大手が「地域独占」にこだわり、電力会社間の送電線の整備が進んでいなかったためだ。
送電網の整備には巨額の費用がかかり、周波数の異なる東日本と西日本間で融通できる電力量を90万キロワット拡大する工事では1400億円前後の費用が見込まれている。
送電網へのコスト増は電気料金の負担増につながる可能性もあり、「送電網にどのくらい投資するかの最適点を見いだすのは難しい」(SMBC日興証券の塩田英俊シニアアナリスト)との指摘もある。【安藤大介】
◇電力システム改革
電力大手10社が地域ごとに電力供給を独占してきた電力市場に多くの事業者の参入を促し、電気料金の引き下げやサービスの多様化を目指す改革。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を契機に、政府は13年に3段階の改革を決定した。
その第1弾が、今年4月の広域的な電力融通の司令塔となる「電力広域的運営推進機関」の設置だ。第2段階は来年4月の電力小売り全面自由化で、これまで電力大手が独占してきた家庭・商店向けの7.5兆円市場に異業種からも参入できるようになる。総仕上げとなる第3段階では電力大手の送配電部門を切り離し、送配電網をすべての事業者が利用できるようになる「発送電分離」を20年4月に実施する。