政治そのほか速
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パナソニックが、4年ぶりとなる社債発行に踏み切った。3月10日発効の無担保普通社債の総額は、実に4000億円。国内企業で今年最大となる外部調達を後押しした要因は、大きく二つに分けられる。
一つは、構造改革の進展だ。テレビ事業をはじめ人員や工場、保有不動産のリストラをこれまで徹底して進めたことで、中期経営計画で定めた営業利益3500億円、フリーキャッシュフロー(純現金収支)累計6000億円以上という目標は、1年前倒しで2014年度に達成する見通しだ。
津賀一宏社長が、14年度までに改革をやり遂げ、15年度以降は事業拡大に大きく踏み出すことを宣言していた中で、成長戦略に向けた原資をこのタイミングで確保しておくことは、半ば「既定路線」だったといえる。
もう一つは金利環境だ。長期金利が0.4%前後にまで低下し、企業にとってはコストとなる社債の金利も低下傾向にある。
そのため、「今が低金利のメリットを取り込む最も有利なタイミング」(財務部門)であり、金融当局の政策変更による金利急騰リスクを踏まえた先行調達の側面もあるという。
融資へのアレルギー体質
ここで一つ気になるのは、なぜ大規模な資金調達に対して銀行融資ではなく、社債を選んだのかということだ。
大企業向け融資の基準となるTIBOR(東京銀行間取引金利)は、3カ月物が0.1%台で推移しており、スプレッド(上乗せ幅)を考慮しても、銀行融資の方が金利は低かったとみられる。
それでも、あえて相対的に金利が高い社債を選択した背景には、かつて潤沢な手元資金で「松下銀行」と呼ばれてきた、同社のプライドの高さが垣間見える。
3年前、巨額赤字によって現預金から借金を引いた「ネットキャッシュ」が1兆円を超えるマイナスとなったとき、津賀社長の頭を巡ったのは「銀行借り入れによって、経営の自由度を失ってしまうかもしれない」という焦りにも似た思いだった。
今のシャープがそうであるように、経営危機に陥った融資先企業に対する銀行の圧力は、それほど強い。
固定費の削減によってネット資金を改善させ、危機対応策として銀行団から受けた総額6000億円に及ぶ融資枠には一切手を付けず、期限前に解約してみせたのも「自主経営」を貫くための意地だったといえる。
18年度の目標売上高10兆円と再び拡大路線にかじを切ったパナソニックは、社債によって調達した資金を今後どう成長につなげていくのか。
自主独立の中で、反転攻勢のきっかけの一つとして投資した電気自動車の米テスラモーターズでは、早くも中国でリスクが顕在化し始めている。
(週刊ダイヤモンド編集部 中村正毅)