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(91)ウーマノミクス~女性の社会進出~

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(91)ウーマノミクス~女性の社会進出~

 

働く権利日本も課題

 

 

フランソワーズ・モレシャン

 

  女性の社会進出が、経済活動の緊急な課題となっている国があるとすれば、その一つが日本であることは間違いないでしょう。日本の少子高齢化は加速度を増し、40年後の労働力は半減すると言われています。

  「アベノミクス」ならぬ「ウーマノミクス」(Woman+Economics)を提唱したのは、ゴールドマン・サックス証券のキャシー松井さんです。労働力の低下を女性の社会進出によって補うという主張です。

  一方で、毎日のように新聞紙上をにぎわしているのが、妊娠と共に会社を追われる出産(マタニティ)ハラスメント(通称マタハラ……日本は略語が大好きですね)。

  私は経済や労働法の専門家ではないので、私自身の経験を話しましょう。フランスも40年ほど前までは、働く女性にとって受難の時代でした。私が前夫と離婚した時の話です。

  私の娘はまだ3歳で、誰が親権を持つかという争いになりました。私の弁護士は親権を獲得するには、私が「仕事はしない」ということを実証するようにアドバイスしました。私はそのため、働いていたディオール社広報の仕事を辞めざるを得ませんでした。素敵な職場も私のキャリアも、親しい同僚たちともサヨナラです。結果として親権は得たものの無収入でどのように暮らせるでしょうか……それが問題でした。

  法的に親権を得た後、仕方なく私は新たな職探しに奔走しました。ある会社の面接では「あなたは2人目の子どもを産むつもりはありますか? もし、そのつもりがあれば、うちでの就職は無理ですよ」。

  別の会社の社長からはこう言われました。

  「採用しましょう。あなたは離婚しているし、子どももいるから生活費が必要でしょう。きっと、普通の既婚女性よりも、仕事優先で、もっとハングリーに働いてくれるでしょうから、採用します」

  両社ともに幹部候補生の採用でした。今では法律も改善され、女性を採用するときにこうした質問をすることも、また、こうした発言をすることさえ、許されません。

  私にとって姉妹または娘のような日本の、そして北陸の女性のみなさん、頑張ってください!。いつの日かきっと、日本でも私たち女性の当然の権利を手にする日がやって来るでしょうから!

 

「自制と教育」差別抑える

 

 

永瀧達治

 

  フランス人を妻として、フランス文化を専門にしてきた私のことを世の女性たちは「女性に優しいフェミニストに違いない」とか、男性は「軟弱で女々しい男に違いない」などと誤解している。

  男性に嫌われても女性にもてるのだから(逆は困るが)、あえて誤解を解こうとしないが、私とて、昭和に生まれ育った古くて不器用な男……。好きな女性にはわざと冷たくし、おとなしく従順な女性が好みです(妻も昔は……)。

  でも、そんな私でも、女性が社会的に虐げられているのは許せない。「女のくせに」と心で思っても口には出さず、口に出す男は許せない。女をたたきたくても手は出さず、手を出す男も許せない。しかし、それは私がフェミニストだからではない。昔の男だが、差別だけは許せないからだ。

  ヘイトスピーチ問題で、日本は国連人権規約委員会から勧告を受けている。最近の日本では「隣国をおとしめなくては自分の国を愛せない」、「勝ち負けにこだわることが愛国心」……そんな人が増えているようだ。

  私は経済問題が理由で、女性の社会進出を支援するというのは動機が不純で、ウーマノミクスには賛同しかねる。問題は「女性だから」という差別であり、男性もかかわる出産や子育てなどに、法的な理解を示さない男性社会の身勝手な差別である。

  「差別は誰の心にもある。ただ、差別してはいけないという自制と、毎日の教育だけによって差別の暴走を抑えることができる。差別はなくなった……と自制と教育を忘れたとたん、差別は暴走する」

  昔、SOSラシズムというフランスの人種差別反対組織の取材をしたとき、若者のリーダーのアルレム・デジール(現在、フランスの政治家)が語った言葉である。

  ウーマノミクスを語る前に、議事堂や議会で、女性議員を笑ってヤジを言う男たちに自制を求め、教育を続けていかないと、女性の社会進出は、一方的に女性の精神的負担が増えるばかりになる。

  能登は女性が働き男性は楽をする――、加賀は男性が働き女性が楽をする――石川には『能登のとと楽、加賀のかか楽』という言葉があるそうだが、とともかかも楽をできない今の日本だ。男性だ女性だと争っている場合じゃないだろう。同じ、人間だもの。

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