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働き盛りの乳牛が起立不能になり、搾乳ができなくなる低カルシウム血症を簡単に診断できるシステムを帯広畜産大の伊藤めぐみ助教(42)(獣医学)と道立総合研究機構、酪農学園大の研究班が開発した。起立不能による道内酪農家の経済損失は年間約60億円に上る。同症は起立不能の原因の約6割を占めており、実用化されれば酪農家の支えになりそうだ。
伊藤助教によると、道内では年間、出産前後の乳牛約4万頭が起立不能に陥り、そのうち約4000頭が死亡している。伊藤助教は、生乳生産量の低下や治療代、乳牛の調達コストなどから損失額を道内だけで年60億円と推計した。
同症では、ふらつきや食欲低下などの兆候はあるものの、「起立不能となる乳牛と、ならない個体の違いは見ただけでは事前にはわからない」(伊藤助教)という。伊藤助教らは、2013年度から総務省の委託を受け、低コストで素早く診断する技術の研究開発に着手。道内各地の乳牛約900頭から採血するなどし、血中カルシウム濃度が低下すると心電図の波形に特有のパターンが表れることを見いだした。
この原理を利用し、無線式の心電計を乳牛に装着、タブレット端末のアプリで心電図の波形を分析して血中のカルシウム濃度を30秒程度で高精度に推定するシステムを開発した。従来は、乳牛から採血し、100万円以上する機器で分析したり、専門施設に送ったりする必要があった。
伊藤助教は既に動物用医療機器メーカーと話し合いを進めている。早期に、獣医向けの機器を低価格で実用化したいとしており、「起立不能を予防できるようになれば、酪農家にとっては大きな利益になる」と期待している。