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【セバストポリ(クリミア半島)田中洋之】ロシアがウクライナ南部のクリミア半島を一方的に編入してから18日で1年。現地で「歴史的偉業」をたたえる記念行事が繰り広げられる一方、プーチン露政権はクリミア実効支配の一環として軍備拡大を進めている。4月からはロシア軍の徴兵も実施され、クリミアの軍事・戦略的役割が強化されそうだ。
【核兵器準備】ロシア、ウクライナ問題で譲歩する意志皆無
ロシア黒海艦隊基地があるクリミア南部セバストポリ市。地元の初等・中等学校で最終11年生のアルチョム・アダルスキーさん(16)は「将来は祖父のように海軍の兵士になりたい。ウクライナの海軍はないに等しく、ロシアになって良かった」と話した。アルチョムさんは毎日学校が終わると、海軍の歴史や海事の基礎などを教える市立の予備校に通う。生徒数は約500人。再来年で創設50周年を迎える同校のアレクサンドル・オソキン校長(47)は、ロシアへの“国替え”で「生徒の向上心が高まり、卒業後の進路も広がった」と語る。
ソ連時代に軍人・軍属15万人を擁したロシア黒海艦隊は、ソ連崩壊でウクライナの艦隊と分割され約1万2000人に減少。艦船や施設の老朽化が進んだ。プーチン大統領は強制編入したクリミアの軍備増強を指示。ロシア軍は南部軍管区に組み込んだクリミアに7兵団と8部隊を新設し、昨年11月にスホイ30戦闘機や対空ミサイル「S300」を配備した。
さらに、長距離爆撃機Tu22Mや短距離ミサイル「イスカンデルM」の導入も取りざたされている。カーネギー国際平和財団モスクワセンターのドミトリー・トレーニン所長は「クリミアは東欧や地中海に配備される米国のミサイル防衛システムに対抗する重要拠点となる」と指摘する。
クリミアでは約1万6000人のウクライナ軍人・軍属がロシア軍に転籍した。4月にはロシア軍の新規徴兵が始まる。編入直後の昨年は見送られたが、ロシア統治への移行期間が昨年末に完了したことで「本土並み」の実施が決まった。ショイグ国防相は「クリミアでの徴兵者は来年末までは地元に、その後はロシア全土に配属される」との方針を示している。
昨年4月に出身地のクリミアを離れ、ロシア統治下での人権抑圧問題などを告発するジャーナリストのアンドレイ・クリメンコ氏=ウクライナの首都キエフ在住=は、「クリミアのロシア軍は1~2年後に10万人規模になるだろう」と指摘。「プーチン大統領はクリミア全体を巨大な軍事基地にしようとしている」と批判している。