政治そのほか速
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「気にすんなよ。慎吾にフットサルは続けるように言えよな。俺、ぜーんぜん気にしないから。あのな、フットサルやってると女子に注目されるから恋のチャンスはやっばいほどあんだぞ。試合の後に応援に来てくれた女子達と飲みに行けるから」
「冬馬…」
「あ、ってことはお前の慎ちゃんも狙われるぞう。あの寂しげな甘い横顔がたまんないって応援団のリーダーが騒いでたから」
「冬馬、ありがと。私、ずっと考えてて…」
「ま、好みの問題だよな。桃香は支えてあげたくなるようなフワっとした男が好きなんだからしょうがない」
「ええ? フワっとした男…? 慎ちゃんがいきなり逞しいオオラオラマッチョになったら、嫌いになるのかなあ?」
「そしたら、俺んとこへ来いよ」
「そんな都合よくいかないよ。冬馬、クリームついてるよ。ここんとこ…」
冬馬のあごを人差し指でつつこうとした瞬間、冬馬が桃香の人差し指を握った。
「ずっと友達ではいてくれよ。練習も試合も見に来いよ」
「…うん。もちろん」
冬馬は最後まで男っぽい。かっこよかった。カフェを後にして、駅まで並んで歩いた。街灯の光は冬になるとやけに冴えてキラっとしている。ふたつの影がくっつきそうでくっつかない距離を保つ。人通りが少ないところで、冬馬が立ち止まった。
「桃香、1回だけ」
「なに?」
「キスしたい」
「え?」
「俺へのクリスマスプレゼントってことで」
立ちすくむ桃香を抱き寄せ、冬馬は唇を重ねた。桃香はとまどったが、なぜか心地よく感じてしまい逃げることができなかった。
「ばか、桃香のばか。なにやってんだ私」
桃香はその夜、また自分を責めた。ラブバージン。男の人に振り回される弱い自分。髪の毛をかきむしり「生まれ変わらなきゃ」と何度も叫んだ。
(続く)
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(二松まゆみ)