その出来事を冬馬から聞いとき、桃香は両手でガッツポーズをつくり、ピョンとジャンプした。
桃香は、残業や歌のバイトがないときは、フットサルの練習にできる限り付き合うようにした。幸い、会社はほとんど定時に終わる。歌の練習の時間が減るけれど、今は慎吾のために時間を使おうという気持ちになっていた。自分の夢を追うのも大事。でも、それと同じくらい夢を叶えてあげたい人、それが慎吾だ。
家で歌を歌っていても、ピアノを弾いていても、ときおりフっと慎吾のボールを追う姿が浮かぶ。愛の歌を歌う時は感情が入り込み、ひとり涙を流すこともあった。それでも慎吾のことを恋人として好きなのかどうなのか、はっきりわからなかった。付き合おうとかいう言葉はふたりの間には出てこない。ただ、一緒にいてその時を大事にしている関係。桃香は、親友の鮎子の弟だからやさしくしてあげたくなるのかな、と思ったりもした。
ボーカルレッスンの日だった。講師のカオル先生に会うと、心が華やぐ。いつもその日の気持ちを表す色を、洋服やアクセサリーの一部に取り入れるおしゃれな先生。
「今日は空色の気分。だから、ブルーのピアスとブレスレット」
と言って、つかみどころのない話題を提供してくれる。それがまた楽しい。
「空色の気分ってどんな感じですか」
女同士、話題はどんどん膨らむ。カオル先生のお洋服を見るのが楽しみだ。カオル先生がお手本で歌うとき、桃香は聞き惚れる。きれいなロングヘアをさらさら揺らしながら、メロディに気持ちを込める。桃香の憧れの女性でもあり、おねえさん的存在だ。桃香は発声練習を終えて、課題曲を歌う。
あなたのそばにいると
私は強くなれるから
悲しいことは 小さくちぎって
風に飛ばしましょう…
ピアノのエンディング音が止まるとカオル先生が立ち上がった。
「桃香ちゃん、すっごくよくなってきてる。歌い方変わってきてるよ。恋したかな?」
今日のカオル先生は、ワインレッドの長い丈のフレアスカートをはいている。
「炎のように燃え上がるオレンジ色の恋。胸の中でしんしんと湧き起こるワインレッドの恋。ピュアな水色の恋。恋も色をイメージすると、納得できる気がしない?」
カオル先生がスカートをつまんで、お姫様のようにターンした。
「カオル先生、今、好きな人がいるんですね?」
桃香が早口で尋ねる。カオル先生はやさしく微笑む。女神さまのように見えた。
(続く)
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(二松まゆみ)寒い時期のごちそうの代表格といえば「おでん」。体の芯から温まりますよね。そんなおでんを短時間の加熱で簡単においしく作る方法をご紹介します。その方法はズバリ「保温調理」。最近はお弁当用の保温ジャーも人気なので認知度も高いと思いますが、今回使うのは家で使う少し大きめの保温調理器です。
夜におでんを煮始めて保温し、次の日の朝まで放置するだけで、よくしみた大根にこげてない玉子の絶品おでんができ上がります! 最初の直火加熱が終わればガスはもちろん、電気も使わないので安全でエコな調理法です。
大まかな工程は、1.保温調理鍋で大根を煮る→2.味付けをし、そのほかの具材を加えて沸騰させる→3.そのまま保温で4時間放っておけばできあがり! それではレシピです。
<材料>
大根:皮をむいて2cm厚さの半月切りにしたもの1/4本分
水:大根が漬かるくらい
おでん種付属のだしのもと
おでん種(小):それぞれを半分に切る
ゆで卵:2個
しょうゆ:適量
みりん:適量
塩:適量
<作り方>
1.保温鍋の内鍋に大根を入れ、火にかけて沸騰させ、10分煮て大根に火を通す。
2.おでん種についているだしのもとを加えて味をみて、しょうゆと塩とみりんで味を整える。
3.残りのおでん種とゆで卵を加えて沸騰させて内ぶたをし、保温用の鍋にセットして外ぶたをする。
4、そのまま4時間以上放置して完成。温め直して召し上がれ!
保温調理鍋は最近人気のサーモスを使いました。沸騰させてふたをして保温すると、次の日でも70度くらいをキープできる優れものです。大根さえ火が通っていれば、ほかの材料は80度くらいで十分熱くなり、各素材からいいダシが出てくるので、直火でコトコト煮続けなくてもおいしくなります。
しかも放置する時間=調理時間なので、直火で短時間で調理するよりも、味がよく染み込みますよ。ゴトゴト沸騰もしないので、面倒な面取りも必要ないので簡単です。ちなみに、保温鍋を使えばおでん以外でも、カレーやシチューなどの煮込み料理が放置するだけで簡単になります。この冬はエコで楽チンな煮込み料理を楽しんでみてはいかがでしょうか。
(さわけん)