あらゆる“リア充”なイベントが日々SNSにアップされる世の中。フェイスブックやツイッター、最近ではインスタグラムなど、SNSを開けばとにかくリア充投稿に溢れています。そんなSNSの投稿にうんざりしつつ、気づけば自分もついつい彼とのデート写真を投稿してしまったり……。良くも悪くも現代人はSNSから逃げられない環境にいるようです。
どうして現代人はこうもSNSにリア充投稿をしてしまうのでしょうか。どうやら私たちはSNSにリア充投稿をしないと、十分な満足感を得られなくなってきているようです。
友達と旅行に行った、高級レストランに行った、彼氏とデートに行った……これらの価値ある経験は、昔であれば、自分ないしはイベントに関わった少数の人たちと“思い出”として語り合えば十分でした。ところが、SNSの発展した現代では、これらは全て、写真に収められ、SNSにアップされ、多数の友人知人に“リア充”イベントとして共有されなければ満足がいかない。何においても楽しい思い出にするためには、写真に収め、他人と共有する必要があるのです。
このことが、過度な写真依存の状況を生み出しています。観光地に行ってひたすらパシャリ、デート中にしきりにパシャリ…何を見るにも何をするにもすぐ写真を撮る。最近ではスマホひとつあれば、デジカメ顔負けの画質で写真が撮れるので、ますますその傾向に拍車がかかっています。とにかくちょっとしたことでも撮りまくるので、気づけばデータフォルダがいっぱいに……なんてことも。あなたもきっと身に覚えがあるのではないでしょうか。
ところが、ある研究によると、このような写真依存は、なんとかえって思い出を薄めてしまうということが知られています。写真に収めること自体が目的となって、半ば反射的に写真を撮るようになった結果、その場の情景が印象に残らなくなってしまったというわけです。写真(=「記録」)に残そうとするあまりに、「記憶」に残らなくなってしまうのは本末転倒。「彼とのいい写真がいっぱい撮れた! でもこの場面なんだっけ……?」となるのはあまりにもさみしいことではありませんか?
物事をしっかり記憶に残すためには、いかに全身を使うかが大切だと言われています。目の前に広がる光景をなんとなく見るだけでなく、その場の匂いや音や空気の肌触りを目いっぱい感じることで、ぐっと記憶に焼き付けることができるというわけ。…スマホのカメラ画面やデジカメのファインダーを見つめてばかりいては、それらを感じることはできません。彼との思い出をずっと忘れられないものにするためには、一旦カメラを脇に置き、とにかく全身全霊でデートを楽しむことが重要なのです。
たとえ写真を撮り忘れてしまっても、SNSにアップすることができなくなってしまっても、「あの時のあのデートよかったよね!」なんていつまでも彼と思い出話に浸れるのは、素敵なことです。
また、撮って終わりではなく、その後にきちんと写真を振り返ることも重要です。フィルム時代とは違って、スマホ・デジカメはデータで大量に保存することができます。一見データの方が簡単に見返すことができそうですが、実際のところは、写真を現像したり、整理したりする機会が減ったために、古いデータはどんどん奥の方へと追いやられ、埋没することが多いのです。データで大量に保存できるからこそ、きちんと整理して振り返りたいもの。今、改めてデータフォルダを見てみてください。撮ったことすらよく覚えていないビックリするような写真、たくさん眠ってはいませんか?
このように、写真を大量に撮ってSNSにアップすることに必死になりすぎると、振り返ってみれば「記録」しか残らなくなってしまいます。何もかも写真に撮りたい気持ちをぐっと抑えて、もっと目の前のことを全身で楽しみましょう!
試しにまずは“ノーカメラ・デート”から始めてみていかがでしょうか?
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