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■なぜお風呂で疲労回復ができるのか?
疲労回復の強力なツールは「お風呂」です。最近は、若い世代を中心にシャワーだけ、という人も増えているようですが、それでも7~8割の人は毎日お風呂に入っているという報告もあります。それだけ日本人に根付いた生活習慣と言えるでしょう。
イメージしてみてください。バスタブにたっぷり張った温かいお湯にどっぷりとつかる、そしてお風呂上がりのさっぱりとした爽快感、誰もが幸せを感じる瞬間です。このように気持ちの面でも癒されますが、体に及ぼす作用も様々あります。医学ではその効果を下記の5つに分けて考えています。
□温熱作用
□静水圧作用
□浮力作用
□粘性、抵抗性作用
□清浄作用
今回は、特に温熱作用がどのように疲労回復につながるのかを見ていきましょう。
■温められることで血管が拡がる
温かいお湯につかると、皮膚表面付近の温度が上昇します。お湯に触れているのは皮膚だけですが、皮膚にも多くの血流があり、そこから熱が伝わって血液が温められます。こうして温められた血液はとどまることなく、あっという間に全身を駆け巡ります。これが温熱作用の効果です。
研究の条件、個人差によって違いはありますが、40℃前後のお湯に10~15分ほどつかることで、体温は約1℃上がります。この場合、皮膚表面の温度だけでなく「深部体温」と言われる体の中心部分の温度も上昇します。
お風呂で血行が良くなるといった話は、既に聞いたことがあるでしょう。例えば、足湯につかった足などでも、皮膚が赤くなり、ほてりが見られます。これはお湯の温熱によって血液循環が良くなっている状態です。
■「血液の循環が良くなる」ってどういうこと?
血液の循環が良くなるということは、医学的にはどういう状態を指すのでしょうか? そのしくみは、少し複雑な作用によって起こっていることが分かってきました。
お風呂の温熱は神経を刺激し、血管内皮細胞という血管の内側にある細胞から一酸化窒素(NO)を産生させます。この一酸化窒素には血管を強力に拡張させる作用があり、血管が拡がることで多くの血液が流れます。そして結果的に、心臓から全身に送り出される血液量も増えることになるのです。以上のような作用から、温熱によって血管は拡がり、血液循環が非常に良くなります。
ここで本日のテーマである疲労に話が戻りますが、そもそも疲労はなぜ起こるのでしょうか? その定義は難しく、1つの事柄だけで説明できるものではないでしょう。…