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浦和のホーム埼スタで健闘した松本山雅 [写真]=Getty Images
「松本はもともとサッカー専用スタジアムがあって、(地域住民の)チームに対する愛情もあった。そういう環境の中で、僕は仕事をやりやすい。現場で一生懸命やっていることがサッカー文化としてついてきたんだと思います」
0-1で浦和レッズに敗れた後、「松本に根付いているサッカー文化」について問われた時のことだ。記者会見で松本山雅FCの反町康治監督は、そんな話をした。
J1リーグ第4節。松本は敵地埼玉スタジアムのピッチに立った。
「アルウィンも素晴らしいですが、埼スタも一人ひとりが声を出して、それが響いてくるような感じが“浦和のホーム”なんだなって感じました」(GK村山智彦)
「埼スタはアウェイ感がすごくあった。そういうスタジアムで試合ができたことはうれしい」(MF岩上祐三)
キックオフ直前の選手たちは少し緊張しているようにも見えた。3万人を超す大観衆と、スタジアムのいたるところから聞こえる「WE ARE REDS」の歌声。浦和が作りだすJリーグ屈指の空気感は、重く強く相手に届く。これまでに経験したことのないような雰囲気は、まさにアウェイだったはずだ。
だが、いつもどおりの風景もあった。この日も多くの緑色で埋まっていた松本のゴール裏。そして、メインスタンド上層部。選手入場時には、スタンドに立ちタオルマフラーをたくさんのサポーターが掲げていた。
「今日も一つになって、追い求めろ俺らと信州・松本のFOOTBALLを 行け、山雅」
真っ赤なスタジアムの中で聞こえた「松本山雅コール」は、どれほど選手たちに力を与え、戦う勇気に変えてきたのだろう。0-0で迎えた試合終盤。その声は一層大きくなっていった。選手たちの足が止まらないように、歌声も鳴り止むことはなかった。
85分に浦和のDF森脇良太の素晴らしいゴールが決まった後も、敗戦が決まった後も「まだまだ」と言わんばかりの大声援は聞こえていた。だからこそ、選手たち、監督は言葉を続けるのだ。
「今日もたくさんのサポーターが来てくれた。こういう素晴らしいスタジアムで試合ができたことは幸せなことだけど、でも勝ち点3を取れなかったことが悔しい。この敗戦を次に生かさないといけない」(DF田中隼磨)
「これ以上は求めることができないくらいに、最後の笛がなる瞬間まで選手たちはよくやった。こういうスタジアムでのプレー経験を持つ選手も少なく、浦和のリズムの中でもよく抑えたと思う。下を向く必要はないし気持ちを切り替えてホームでの戦いに備えたい」(反町監督)
チームとサポーターがともに歩み“松本”のFOOTBALLは育まれてきた。それが文化として根付いている証が、ゴール裏のあの光景であり、アルウィンの景色なのだ。
試合後、悔しさににじむ表情のまま、選手と監督はスタンドに頭を下げた。送られた拍手はやっぱり、最後の選手の姿が見えなくなるまで続いていた。悔しさはスタンドに届き、声援はピッチに届いていた。
だから――。松本山雅が松本の象徴であり続けるように、彼らは変わらずに歌い続けている。その歌声を誇りに選手たちは戦っている。一緒に戦う仲間にブーイングはいらない。そんな思いを感じる90分が、ここにはあるのだ。
「現状に満足せず、どんどん前に突き進みたい」と、冒頭の質問の最後に反町監督はそう口にした。松本の次節は、ホーム・アルウィン。次こそは松本の地にJ1初勝利を。そして鳴り止まない歓喜の歌声を。松本に根付く“文化”に新しい1ページが開く瞬間が、もうすぐやってくる。
本記事は「サッカーキング」から提供を受けております。
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