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季節の変わり目にあって、日々の気温変化が激しくなってきました。体調管理が難しく、風邪をひいたりする人も多く現れる時季です。夜桜を見に出かけ、寒さで体調を崩す場合もあるでしょう。
そのような場合に、病院で診察を受けると抗生物質を処方されることが多々あります。抗生物質は、ウイルスや細菌を殺したり増殖を防ぐ効果がある薬剤です。同様の働きをなす薬剤で抗菌剤と呼ばれるものもありますが、天然由来の物質から成分を取り出したものが抗生物質、化学的に合成したものが抗菌剤と分けられています。両方合わせた薬剤を抗生剤と呼ぶこともあります。
普段は意識していませんが、私たちは日々さまざまな細菌と暮らしています。体の内外に無数の微生物が存在し、特に大腸の中には100種類以上の菌が約100兆個もいるといわれています。
一方で、外部から体内に菌が侵入すると、途端に体調に異変を来すことがあります。そのため、体には菌の侵入を防ぐ防御機能があります。皮膚の表面にある角質層や皮脂、鼻やのどなどの粘膜は、その代表です。胃や腸にも殺菌効果作用が備わっており、普段は菌が増殖しないように体内の免疫システムが働いているのです。
ところが、体の免疫システムが破られた場合には、病気を発症するのです。そこで、その侵入・増殖した細菌を殺すために抗生物質を使います。
理論的には正しいのですが、抗生物質は悪い細菌のみならず、本来体を守るための、もともと体に棲みついている細菌も殺してしまうので、使い方によっては体の持つ免疫機能を低下させてしまいます。そうなると、感染症にかかりやすくなったり、抗生物質に依存しなければ体調を崩しやすくなるなどの悪影響が出てきます。
●抗生物質の適切な使い方
そこで、抗生物質の適切な使い方を学びたいと思います。まず、処方されたからといって、安易に抗生物質を飲まないことが重要です。たいていの病気は、1日から数日安静にすれば体の持つ免疫システムによって回復します。どうしても安静にしていられない事情がある場合や、安静にするだけでは回復が見込めない場合のみ使用するべきでしょう。
また、使用する場合は、しっかりと用法を守って服用し、細菌を死滅させることです。1度飲んで、症状が軽くなったからあとは飲まない、というのが最も危険です。悪い菌と良い菌を両方殺す抗生物質を飲んだ場合、免疫機能も弱っているわけですから、悪い菌が死滅するまで抗生物質を飲まなければ、再度増殖し病気が慢性化する危険があります。
従って、「できるだけ飲まない、飲むときはしっかり飲む」の姿勢が重要です。ただし、体力が落ちている場合、免疫力がもともと弱い人(胃腸が弱い人など)、栄養状態が悪い人、コレステロール値が低い人は、抗生物質が効きにくい場合があります。
抗生物質は非常に効果の高い薬ですが、その分副作用も大きいため、十分に注意して使いましょう。「体調が悪いから、念のため抗生物質を飲んでおこう」などと気軽に服用するのはやめるべきです。
アナフィラキシー(ショック症状)、薬疹、大腸炎、腎障害、けいれん、アレルギーなどの重篤な副作用が起きることもあります。また、抗生物質を常用すると、体内に耐性菌が生まれることもあります。そうなると、いざという時に抗生物質が効かなくなります。有用であるからこそ、本当に必要な時の切り札として、とっておきたい薬です。
(文=ピカケ/薬剤師)