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松本戦でリーグ戦初ゴールを決めたFW小屋松知哉(左)[写真]=Getty Images
デビュー戦の悪夢から約1年。名古屋グランパスの若きスピードスターが完全復活の狼煙を上げた。
7日に行われた松本山雅FCとの開幕戦。昇格組の松本に先制点を奪われた直後の33分だった。DF竹内彬のロングフィードをFW永井謙佑が巧みに右足で前へつなぐと、そこへ鋭く抜け出して豪快に右足を振り抜く。京都橘高2年時に高校選手権で得点王を獲得し、鳴り物入りで名古屋へ加入したFW小屋松知哉の記念すべきリーグ戦初ゴール。大けがを乗り越えた期待の星が、ついに西野朗監督の大抜擢に一発回答。得意の形から試合を振り出しに戻す一発を豪快に叩き込んだ。
昨年は苦しさとの戦いだった。プロ1年目ながらキャンプ中から持ち前のスピードと決定力が高い評価を受け、J1第6節のサンフレッチェ広島戦に途中出場でJ1デビューを飾る。だが、わずか9分後、接触プレーで左ひざ前十字じん帯断裂の重傷を負い、全治約6カ月の診断を下されてしまった。U-22選抜にも選ばれ、リオデジャネイロ・オリンピック出場を視野に入れるストライカーが歩むことになった苦難の道。長いリハビリを乗り越えてシーズン終盤にチーム練習に合流したが公式戦への復帰は叶わず、悔しさを払しょくする舞台は今年へ持ち越しとなっていた。
迎えた松本との開幕戦。西野朗監督がスタメンに抜擢したのが、この19歳のストライカーだった。試合2日前に先発起用を示唆されていたという小屋松は「不安はあった。けがをしないようにしつつ、自信を持ってプレーしようと思っていた」と心境を語った。
開始早々に鋭い飛び出しから迎えたビッグチャンスは相手GKのファインセーブに阻まれたものの、得点シーンを含めて持ち味は存分に発揮していた。ただし、後半はボールに絡む機会が減少し、1-3とリードを広げられた直後の78分にピッチを退く。
結果を残した一方、当然ながら満足はしていなかったのだろう。試合後の取材では「スタメン出場はうれしかったし、得点は大きな自信になる」と手応えを口にしながらも、「勝ち切れなかったことが残念。消える時間が多かったのは課題だし、もっとチャンスがあった」と険しい表情を崩さなかった。
だが、この試合と初ゴールは彼にとって大きな第一歩となったはず。ようやく戻ってきた豊田スタジアムのピッチに、溜め込んでいた11カ月間の思いをぶつけた。
「やっとチームのために働ける。でも、これだけたくさんのサポーターが来てくれたのに勝てなくて申し訳ないと思う。もう今日のことは忘れて、次の試合に向かいたい」
前線の豪華布陣を揃える名古屋。残念ながら松本との開幕戦で勝ち切ることはできなかったが、若きスピードスターの復活はチームにとっても、日本サッカー界にとっても大きなものとなる。ついに今月から始まるリオデジャネイロへの道。近い将来、そのメンバーに、必ずや小屋松知哉の名前が挙がることになるはずだ。
文=青山知雄
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