政治そのほか速
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【マンション業界の秘密】国は基本的に「持ち家政策」を進めている。賃貸ではなく、社宅でもなく、「住宅を買って住む」というのが望ましいことだとされている。
そのためにさまざまな優遇制度がある。固定資産税や譲渡益の課税が低くなるとか、住宅取得のローン控除等である。
最長35年の住宅ローンもその1つ。今は銀行が主体だが、元は公的機関である住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)が1960年代に始めた融資形態である。
そのころ、住宅が高くなりすぎて10年ローンでは買えなくなった。だったら35年かけて返済すれば、庶民も何とか買えるだろうという発想。25歳で借りると、定年になる60歳でちょうど返済が完了する。仮に35歳で借りても、60歳の時に退職金を使って繰り上げ返済。それを前提に考えられているシステムだ。
これは高度経済成長期の発想で危険きわまりない。
今の時代、一体誰が35年の安定収入を保証されているだろうか。公務員だけではないか。
35年後の日本を想像してみよう。重要なキーワードは「人口」と「高齢化」。2050年の日本の人口は約9700万人と予測されている。これは1964年ごろと同じ水準で、その頃、例えば東急田園都市線は溝の口(川崎)まで。もちろん、多摩ニュータウン(東京)も千里ニュータウン(大阪)もない。それでも何とかなっていたのが約9700万人というボリュームなのだ。
2050年、高齢者の中心は、いわゆる団塊ジュニア世代あたりになる。現在、35年ローンを組むということは、完済した時にそういう日本になっているということ。その頃は、そこら中が空き家だらけになっている恐れもある。
固定資産税の3倍くらいが年間家賃の目安になるだろうから、郊外の駅から徒歩5分の築20年の3LDKが、月に5万円くらいで借りられるはず。今の4分の1程度くらいと考えればいい。
そんな時に、35年前に購入したマイホームが、やっと完全に自分のものになる。
ちょっとだけ郊外の駅から徒歩5分ならまだいいだろうが、徒歩15分なら借り手を探すのは簡単ではない。
売ろうとしても築35年の老朽マンションだから、せいぜい300万円から500万円。現に、郊外でバス利用の築35年の中古マンションは、それくらいで取引されている。
日本は、そういう社会に向かってヒタヒタと確実に進んでいる。
「どこかでインフレがやってくるから返せる」
35年ローンを組む多くの人がそう考えている。確かにそういうことはあり得るだろう。しかし、インフレが来なければどうするのか。日本の物価はこの35年で大して上がっていない。次の35年は…。
■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。不動産会社の注意情報や物件の価格評価の分析に定評がある(www.sakakiatsushi.com)。著書に「年収200万円からのマイホーム戦略」(WAVE出版)など。