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今季からウエスタン・シドニーでプレーする高萩 [写真]=Getty Images
2月25日のアジアチャンピオンズリーグ(ACL)H組初戦。鹿島アントラーズの前に立ちはだかったのが、昨季アジア王者のウエスタン・シドニー・ワンダラーズだった。昨季ACLでは小野伸二(札幌)が助っ人として大活躍したこのチームに、今季から高萩洋次郎、田中裕介の日本人選手2人が参戦。鹿島戦では揃ってゴールシーンに絡む働きを見せ、大きな存在感を示した。
とりわけ高萩のパフォーマンスは見事だった。。前半は4バックの前のボランチに陣取り、献身的な守備と小気味いいパス出しでチームに貢献。1-1で迎えた終盤には本職のトップ下に上がって逆転弾を叩き出した。さらに後半ロスタイムには、FWブリッジのダメ押しとなる3点目を演出。鹿島の出鼻をくじくと同時に、ACL連覇に向けて幸先のいいスタートを切ることができた。
「向こう(オーストラリア)での初戦でゴールを決めて、ACL初戦でも点を決めることができた。何だか運を使い過ぎちゃうんじゃないかと思います」と高萩は満面の笑みを見せる。日本凱旋試合を3-1で完勝したのだから、喜ぶのも当然のことだろう。彼の新天地での第一歩はまずまずのようだ。
2012、2013年にJ1連覇を果たしたサンフレッチェ広島でエースナンバーである10番を背負い、アルベルト・ザッケローニ監督率いる日本代表にも名を連ねたアタッカーがあえてクラブとの契約を延長せず、今季からオーストラリアへ移籍したことは少なからず周囲を驚かせた。その真意を問うと、彼は「新しいチャレンジをしたかったのが第一。日本のクラブへ行くより海外に出てチャレンジする方がいろんな意味で違うと思った。Jで2回優勝したことに少し満足してる部分もあったし、あえて環境を変えたかった」と改めて胸の内を語ってくれた。
広島市に隣接する安芸高田市吉田町にクラブハウスと天然芝の練習場が整備され、全ての雑務をホペイロやマネージャーがこなしてくれる広島とは違い、ウエスタン・シドニーは環境面で不備な部分も多いという。
「この鹿島戦も試合前のアップの時は(日本が寒いのに)短パンしか用意されてなかったですからね」と高萩は苦笑いしていた。このように足りないものが多い分、逆にハングリーになれることを、彼は2006年にレンタル移籍した愛媛FC時代に学んでいる。「(まだ発展途上だった)愛媛に行った時みたいにハングリーな気持ちを思い出して、また1からスタートしたいと思ったんです」と彼は新たな環境で原点回帰を図ったようだ。
サッカースタイルもスキル重視の日本とは大きく異なるという。
「オーストラリアに行って一番思ったのは、勝利にこだわること、球際の戦いに負けたくないってこと。ラグビーをやってるんじゃないかっていうくらい強く厳しくいくので、そこは勉強になりますね。去年、ウエスタン・シドニーと対戦した時にもそのことは感じてましたけど、クラブの中に入って余計感じるようになった。Aリーグの対戦相手もその傾向が強い。そういう環境でプレーすることで、自分もさらにステップアップできる。そう思って割り切ってやってます」と高萩はどこまでも前向きだ。
ラグビーのような肉弾戦を厭わない大柄なオーストラリア人選手の中に、高萩のような創造性溢れるファンタジスタが加わったことで、チームに連動性と変化がもたらされたのは間違いない。昨季前半、チームをけん引した小野もオーストラリア人選手に足りないものをもたらしたから異彩を放ったのだろう。ドイツで活躍している香川真司(ドルトムント)や清武弘嗣(ハノーファー)もそうだが、ハードワークができてスキルの高い日本人選手は屈強な選手たちの間に入ると輝きを増す。高萩は自分を飛躍させるのにベストな環境を選択したのかもしれない。
「僕が活躍することで、オーストラリアのチームが『日本人選手はいい』と高く評価してくれて、どんどん移籍するようになればすごくいいこと。パイオニアの伸二さんも言ってましたけど、そうなるように自分が仕向けていきたい。そのためにも、自分がしっかり結果を出さないといけないと強く思います」と彼は今、自分のやるべきことを明確に見据えている。当面はボランチとトップ下で併用される可能性が高いが、インテリジェンスの高い高萩ならあらゆる役割を臨機応変にこなし、チームに不可欠な立場を勝ち取ることがきっとできるはず。今後の彼と田中、そしてウエスタン・シドニーの動向が非常に興味深いところだ。
文=元川悦子
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