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2月24日に発売されたハーゲンダッツ ミニカップ「華もち・きなこ黒みつ」「華もち・みたらし胡桃」が、そのわずか2日後に販売休止を発表。消費者の間ではインターネット上を中止に「話題性を意識した炎上商法なのでは?」などという見方が飛び交い、ネットニュースでも取り上げられる事態に発展した。
過去の類似ケースとしては、2012年9月に発売された赤城乳業のアイス「ガリガリ君リッチ コーンポタージュ」がその珍しい味のためTwitterなどで話題が拡散し、発売わずか3日後に販売休止、半年後に再販売を開始した。04年に京都ブランドを掲げサントリーから発売されたペットボトル飲料「伊右衛門」も発売直後に売り場から姿を消し当時話題となったこともある。
購入不可となれば、より一層その商品が欲しくなるのが人間の心理であり、休止前に特別意識をしていない消費者でも再販後に目に止まれば「手に入りにくい人気商品」という先入観から手に取るケースも想定され、企業側も再販売のタイミングは重要視しているだろう。
本件についてハーゲンダッツジャパンの広報課に問い合わせると、次の回答が寄せられた。
「該当商品につきましては、現在各所調整中につきご質問にお答えすることができません。弊社のホームページに記載しております内容をご理解いただけると幸いです」
同社ホームページ上では主に「予想を大きく上回る売れ行き」「継続提供の困難性」「再販に向けての生産体制整備」という主旨のアナウンスを確認できる。しかし、現状を招いた具体的な理由は「予想以上に売れたこと」としか記載がなく、たとえば初回生産数や、生産ライン数についての詳細は不明。よって一部の消費者から冒頭の臆測が生まれてしまったのだろう。
●企業を悩ます初期在庫数問題
今回の一時販売休止について「炎上商法ではないと考えます」と語る、企業のマーケティングや生産体制に詳しいコンサルティング企業関係者は、初期在庫数を決める難しさについて次のように解説する。
「商品を開発し、管理運営を行うブランドマネージャー(ブラマネ)が売れ行きを予測できないことは、実はよくあること。特にマニアックな層をターゲットにした商品は初期在庫数を見誤るケースが少なくありません。ブラマネが自信を持って商品を生み出しても、営業部や販売部から『ヒット性なし』と強く出られると、社内の空気も一変し、不良在庫を抱える恐怖心から生産数を抑える場合もあります」
つまり、いざ蓋を開けると大ヒットしたが生産が追いつかないというケースは、しばしば起こり得る事態だという。
「販売好調のため一時生産休止になったからといって、すぐに大量生産に踏み切るかといえばそれも難しい。再販後の消費者リピート率を企業が考慮するからです。アイスクリームの場合、王道のバニラなどは売れ続けますが、奇をてらった味は『トライアル』として消費者も一度は購入するものの、二度は買わない事例があるからです。よって消費者から強い増産を求められても、企業側は継続性を考え慎重になるでしょう」(同)
商品開発は大手企業ならば数千万円単位の費用をかけ、全国リサーチや事前データを収集するが、それでも予想は困難だという。
「調査とデータでヒット商品がわかれば企業としてこんな楽なことないはず。事前の消費者リサーチでも、消費者は本音を答えるものの、やはりその時々の気分によって意見は変わり、ターゲット層にブレが生じてくるのです。未来予測は誰にもつけがたく、これは大手企業でも外資系でも中小企業であろうと条件は同じです」(同)
今回のハーゲンダッツの件では、一度は食べてみたいと考える多くの消費者にトライアル意識が働いたのは間違いなさそうだ。いずれにしても、同商品の再販が待ち望まれる。
(文=東賢志/A4studio)