人権問題や道徳崩壊がたびたび取り沙汰される中国で、12歳の少年の境遇に注目が集まっている。江西省九江市の農村部に住むADHD(注意欠如多動性障害)の小旺(シャオワン)は、勝手に他人の家に上がり込み、服や靴、食器、日用品、携帯電話などを持ち出して田んぼの中に投げ捨ててしまうといった行動が、村人から問題視されていた。そこで彼の父親が、家に2平米ほどの檻を設けて小旺を中に閉じ込めてしまったのだ。檻の中には2つの木の椅子と排泄用の便器、そして退屈しのぎの麻雀牌があるばかりだ(ポータルサイト「騰訊」1月30日付)。
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生まれたばかりの頃は、特に障害は見られなかったものの、いつまでたっても「お父さん」「お母さん」以外の言葉を話すことができなかったという小旺。また、じっとしていることが苦手で、紙を見ると破らずにいられない、拾った物はなんでも食べずにいられない、ほかの家のものはなんでも投げ捨て壊してしまうという症状が見られるようになり、周囲からは「破壊王」と呼ばれるようになった。
そして7歳の時、小児科病院で検査を受けたところ、初めて医師から大脳の発育不良でADHDであると診断された。
その後父親は、「俺は稼ぎに出なくちゃならないから、ずっと小旺を見ていることはできない。母親も彼を見られないし、近所から毎日のように苦情を訴えられる。これ以上、息子を“野に放す”ことはできない」と、仕事中に限り、小旺を部屋に閉じ込めることにした。
しかしある日、仕事から戻ってくると、部屋は小旺が壊したガラスが散乱し、目も当てられない状態になっていた。そのため次は鎖を購入し、小旺の腕にくくりつけて管理することにした。こうして小旺は、父親が家にいるとき以外は鎖につながれて暮らすことになった。
しかし成長するにつれて、小旺の力はどんどん強くなり、腕の鎖が彼の皮膚を傷つけるようになった。父親はそれを見ていられなくなり、ついに鉄格子の中で彼を育てる決意をしたという。
父親は言う。「俺だって息子を閉じ込めたくない。学校も彼が入学するのを拒否するし、俺が働かなかったら飯が食えない」。実の息子を檻に入れるという行為は、父親にとっても悩み抜いた上の決断なのだ。
村の党幹部も「誰か心優しい人が援助の手を差し伸べてくれれば助かるのだが……」と、行政の無力さを嘆く。
ネット上では小旺の境遇に関し、父親の行為を非難するものと、医療・福祉制度の未整備を問題視するものの、両方の声が上がっている。
現在も小旺は鉄格子の中で暮らしており、父親は息子の病気が治って学校に通えることを願っている。