政治そのほか速
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自分は、世界と競える水泳選手になれるのだろうか――。
小柄で線も細く、得意の背泳ぎでも、国内のトップ争いに入れない。千葉県船橋市立船橋高校の2年の頃、僕は将来が不安でした。
だから当然、練習にも身が入らない。そんな中途半端な僕をやる気にさせたのが、校長の市川恭一郎先生(故人)でした。
ある日の放課後、廊下を歩いていたら、校長室に呼ばれ、迫力のある声で言われました。「お前は勉強なんてしなくていい。五輪に行くんだ!」。僕は思わず「はい」と答えながら、なんて豪快な人だと衝撃を受けたのを覚えています。
会う度に励まされ、「自分なりにやればいいや」という気持ちが、「真剣に練習すれば勝負できる」、そして「五輪でガッツポーズを決めたい」と強い思いに変わりました。練習をさぼることもなくなり、多い時は1万メートル以上も泳いで猛練習を重ねたものです。
スイミングクラブのコーチが「競技会に出るため、欠席が増えますが、大丈夫ですか」と相談した時も、「彼は五輪に出る方が大事だよ」と応援してくれたそうです。高3で迎えた代表選考会では、100メートルで日本新記録をマーク。ロサンゼルス五輪代表の座を勝ち取った時はうれしかったな。
進路に迷った時も、ソウル五輪を視野に入れ、練習に打ち込める大学を選ぶよう勧めてくれました。そのおかげもあり、4年後のソウル五輪で拳を突き上げることができたと思っています。大きな心で支え、やる気と可能性を引き出す。その教えを胸に新たな舞台で挑戦を続けています。(聞き手・桜木剛志)
(2014年5月1日付読売新聞朝刊掲載)