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LINEの既読スルーで人が傷つく理由とは? 伝えたいことをスルーされない方法とは?

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LINEの既読スルーで人が傷つく理由とは? 伝えたいことをスルーされない方法とは?

 LINEの既読スルーで人が傷つく理由とは? 伝えたいことをスルーされない方法とは?

 

 『99.996%はスルー 進化と脳の情報学』(竹内薫、丸山篤史/講談社)

  みなさんは、ふと不安になることはないだろうか。「世の中には情報があふれているけれど、自分はちゃんと情報を受け取れているのだろうか」と。筆者などはそんな不安にかられた結果、流行に乗り遅れたくないという強迫観念にとりつかれ、毎晩夜中までスマホの画面に見入ってしまい、寝不足の日々を送っている。

  そんな不安をかかえたすべての人に読んでほしいのが、“没個性化せずに膨大な情報と付き合っていく”ためのヒントが満載の『99.996%はスルー 進化と脳の情報学』(竹内薫、丸山篤史/講談社)である。

 
 【1年間で有史以来1999年までと同じ量の情報が増加! そして…】

  本著によると、「有史以来1999年までの世界に存在する情報は1TB(テラバイト)のハードディスクドライブ200万~300万個分」という研究結果があるそうだ。これが多いか少ないかは個人の感覚によると思うが、ショッキングなのは、1999~2000年の1年間でそれと同じ量の情報が増えたということである。しかも翌年、翌々年…とその後も毎年同程度以上の情報量が増え続け、2011年には2000年時の600倍も増加したというから、まさに現代は“情報のビッグバン”とでもいうべき状態である。ちなみに情報密度はこの20年で5000倍になっているという。

  ここまでくると、超文系の筆者にはまったく想像がつかないが、こんな天文学的数字では「世の中に氾濫するすべての情報を処理するなんて自分には到底無理だ」、ということだけは理解できた。

 【私たちが処理している情報は全体の0.004%のみ!】

  前述のように、世界中の情報量は直近10年程で爆発的に増えたものの、もちろん人間の情報処理能力が短期間で急に高くなるはずもない。ではどのくらいの処理能力があるかというと、処理できるのは全体の0.004%のみ…残る99.996%はスルーしているのだとか。これはひとえに増え続ける情報量に対して人間のスペックが追い付かないのが原因であり、例え不眠不休でネットサーフィンをしたとしても、すべての情報を処理するのは不可能なのだ。

 【「スルー」は現代人の処世術】

  このように、私たちの身の周りにある情報が膨大であるがゆえに、もし受け取った情報すべてを処理しようとすれば時間はいくらあっても足りず、生活自体がなりたたなくなってしまうというのだ。そこで近年では“スルースキル”などという言葉があるように、「いかに多くの情報を処理するか」よりも「いかに上手くスルーするか」というところに重点がおかれていて、これこそが現代人にとっての処世術であり、「氾濫する情報に対する正当防衛」かもしれない、と著者は語る。そして実は、IQが高い人ほどスルースキルが高いということを裏付ける研究結果も出ているというのだ。

 【「スルーされる」と傷つくのには、2つの要因がある】

  本著の中で言うところの「スルー」とは、「入ってくる情報に対して、自分の反応を表明しないこと」と定義されている。例えば、メールが届いたのに気付いても返信をしない(または後回しにする)、ラジオはBGM替わりにつけておく…などである。また「スルー」の反対語は「即レス(速攻でレスポンス/応答する)」であり、極端なスルーは「ブロック(情報を遮断する)」と言い換えることができるという。

  現代人にとって、スルースキルはなくてはならないものとは言え、スルーされた方は多少なりとも傷つくものだ。それによって人間関係に亀裂が入ってしまうこともままある。LINEの“既読スルー”問題などはその筆頭で、トラブルに発展する例が頻繁に発生しているのはご存じだろう。

  では「スルーされる」となぜ辛いのか。本著によるとその要因は「承認要求」と「コントロール要求」によるものだという。1つ目の要因である「承認要求」とは、誰かに何かを認めてもらいたいという欲求のことだ。そして2つ目の要因は、物事を思い通りにしたいという「コントロール欲求」によるものだという。

 【スルーされた辛さを和らげるためには、発想の転換が必要】

 「承認要求」がスルーされることによって傷つくのを防ぐためには、「そのスルーは限定的であり、自分のすべてを否定されているわけではない」と考えること、と著者。

  また2つ目の「コントロール欲求」を阻害された時、例えばインターネットで見たくもない広告を見せられたケースなどは、そうした強制を行うことで結果的に企業イメージが悪くなるということを広告主が理解し、今の時代にマッチしたモラルをもつ必要があるため、見せられた側には対処が難しいかもしれない。しかし「ここに“自分がスルーされない”ヒントがある」、と語られている。

 【スルーされないために、相手の無意識を利用する】

  本著によると、私たちは無意識のうちに「既知の発信元(家族や知り合い)からの情報」ほど信頼性が高いと感じて「即レス」しており、好意を寄せている相手からのメールなど「感情的インパクトが高い情報」にも、優先的に「即レス」をしようとするという。このことを自分の行動に応用すれば、「スルーされる」頻度を減らせることだろう。

  また、私たちは身の周りに氾濫する情報すべてを処理するのは不可能なので、その多くを「一時的スルー」(判断の保留)として堆積していくのだとか。この堆積した情報をそのままにしておくとやがて「完全スルー」になってしまうので、「レスするかスルーするか」の判断をいかに正しくかつ素早く行うか、というところが重要になるわけである。

 ここで著者から出されたクイズをひとつ、紹介したい。

 【問題】営業マンであるあなたは、今から得意先でプレゼンを行うことになった。内容をスルーされないためには、どの順番で情報を重視するべきだろうか?

 (1)言語情報:言葉の吟味が重要。
 (2)視覚情報:見た目が大事。
 (3)聴覚情報:「美声」はお得。

 【解説】正解は、(2)視覚情報―(3)聴覚情報―(1)言語情報。ある実験によると感情のコミュニケーションで重視されるのは視覚(55%)・聴覚(38%)・言語(7%)の順なのだそう。そして、「こちらの熱意をスルーされない説得力ある話し方があるとしたら、言葉の内容にマッチした振る舞いや、声の雰囲気に気を配ることが大事」、と著者は指摘する。

  本著を読むと、様々なレベルの「無意識とスルー」についての付き合い方が見えてくる。情報の波に飲み込まれそうだと感じているなら、早めに読んでみてほしい。

 文=増田美栄子

 本記事は「ダ・ヴィンチニュース」から提供を受けております。
 著作権は提供各社に帰属します。

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