【大人のＴＶ】昭和偉人伝　２時間スペシャル「川上哲治」「辻静雄」（ＢＳ朝日、１１日午後９時）

　昭和が終わり、２７年がたつ。確実に過去になっていく昭和は、日本という国が壊滅状態から未曾有の復活を遂げた、類いまれなる時代だった。

　昭和という時代が、今なお輝いて見え、われわれの胸に深く刺さるのはなぜだろう。そこには、時代を切り開いてきたリーダーたちがいたからではないか。そんなリーダーの生きざまから、今を生きるわれわれは何を学べるのだろうか。番組では、２人の昭和の偉人を取り上げる。

　ひとりは、プロ野球界にとどまらず、スポーツ界最高の指導者と呼ばれた川上哲治。そして、もうひとりは日本にフランス料理を普及させ、やがて史上空前のグルメブームをもたらした「辻調理師学校」創設者、辻静雄。

　「打撃の神様」と呼ばれ、監督になってからは巨人を９年連続日本一に導いた川上。この「Ｖ９」の偉業は今後のプロ野球界において、「おそらく誰も実現できないだろう」とさえいわれている。果たして、監督・川上とはどんな人間だったのか？

　今回は、元ＮＨＫアナウンサー、羽佐間正雄氏が独自で録音取材を行ってきた生前の“川上語録”を初公開。指導者の神髄ともいえる貴重なメッセージは必聴だ。

　ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」。世界でも高い評価を得ている日本の食文化の礎を築いたのが、食の巨大教育機関「辻調理師学校」の創設者、辻静雄だ。

　新聞記者から調理師学校の副校長となると、本物のフランス料理を学生たちに教えたいという一念から、フランス全土のレストランをその足で食べ歩き、本場のフランス料理の味を学んだ。

　さらに、大人気料理番組「料理天国」の監修など、その教育改革はやがて日本に史上空前のグルメブームをもたらした。

　番組では、静雄の授業風景を記録した貴重な映像などから、その人生を「食」に捧げた男の、飽くなき探求心の原点に迫っている。

　語りは名優、國村隼。その言葉も胸に響く。　（Ｆ）