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冬ドラマのベスト作品&俳優発表! 名脚本家たちの明暗、80年代の回帰、ハッピーエンドのニーズと違和感

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冬ドラマのベスト作品&俳優発表! 名脚本家たちの明暗、80年代の回帰、ハッピーエンドのニーズと違和感

冬ドラマのベスト作品&俳優発表! 名脚本家たちの明暗、80年代の回帰、ハッピーエンドのニーズと違和感

 

●最終回のバッドエンドに反響
テレビ東京の『怪奇恋愛作戦』をラストに、冬クールの連ドラが全て終了した。平均視聴率15%を超えるヒットこそなかったものの、それはクオリティとは別次元の話。また、実力派脚本家のオリジナル作品が多かっただけに、「録画率が高かった」という見方もできる。

実際、今クールは、月曜の刑事、恋愛ドラマからはじまり、ヒューマン、医療、夫婦、不倫、学園など、いつも以上にバラエティ豊かな作品がそろっていた。

ここでは、「日本ドラマ界を代表する脚本家の明暗」「カップルと夫婦はどう描かれたか?」「最終回のバッドエンドが大反響」という3つのポイントから検証し、全20作を振り返っていく。今回も「視聴率や俳優の人気は一切無視」の連ドラ解説者・木村隆志がガチ採点する。

■ポイント1 名脚本家のオリジナル作品に明暗

『リーガルハイ』『鈴木先生』の古沢良太(『デート』)、『フリーター、家を買う。』『僕の生きる道』シリーズの橋部敦子(『ゴーストライター』)、『昼顔』『白い巨塔』の井上由美子(『まっしろ』)、『家政婦のミタ』『女王の教室』の遊川和彦(『○○妻』)、『ガリレオ』『HERO』の福田靖(『DOCTORS3』)、『最高の離婚』『Woman』の坂元裕二(『問題のあるレストラン』)など、今クールの脚本家陣は「今世紀最高」と言ってもいい豪華さだった。

いずれも作家性の強い脚本家だけに、そろってオリジナル作品で勝負。「常に予想を裏切る」古沢、「葛藤と生き様を描く」橋部、「骨太さと心の声で魅せる」井上、「ミステリアスなヒロインと愛情の深さで引きつける」遊川、「変人キャラを楽しく見せる」福田、「タイトなセリフ劇でドキッとさせる」坂元というように、いずれも持ち味を出していたが、視聴率と視聴熱では明暗が分かれた。

視聴率では『デート』『○○妻』『DOCTORS』が高水準をキープした一方、『ゴーストライター』『まっしろ』『問題のあるレストラン』が大苦戦。よもやの1ケタ代にとどまった。

一方、Yahoo!テレビでのコメント数やTwitterなどで見る”視聴熱”は、『デート』が圧倒的に高く、『ゴーストライター』『DOCTORS』『問題のあるレストラン』は固定ファンからの熱い支持を得ていた。厳しかったのは『まっしろ』『○○妻』。前者は設定そのものに、後者は終盤の唐突な展開に対する違和感の声が多かった。

特筆すべきは新たなチャレンジを見せた古沢。初の恋愛ドラマに挑み、独自の世界観を構築しつつ、毎話必ずほっこりさせる奥の深い脚本が際立っていた。

■ポイント2 カップルと夫婦はどう描かれたか?

昨年、『きょうは会社休みます。』『昼顔』のヒットで、久々に復活の兆しを見せた恋愛・夫婦ドラマ。その影響もあってか、この冬は多くの作品がラインナップされた。21世紀になってすっかり減っていたジャンルだけに、各局はどんなカップルや夫婦の描き方をしていたのか。

まずカップルでは、「昼メロ」と掲げた大人の恋愛がテーマの『セカンド・ラブ』。売れないダンサーとアラサー女教師という「満たされない二人が求め合う」展開は、80年代の恋愛ドラマを思わせるクラシックなもの。主人公のモノローグと映像美の重視は、『昼顔』のイメージに近かった。次に、『デート』は全てが規格外のカップル。ニートとリケジョをディフォルメした2人を通して、「現代カップルや結婚に関わる矛盾を考える」という変化球だった。

夫婦で目立っていたのは、『残念な夫』。「夫のいいところがほとんどない」という女性上位のドラマ界を象徴する関係性は新鮮だった。『流星ワゴン』もそれに近い図式。妻への理解が足りない夫が三下り半を突きつけられるなど、弱い立場が描かれていた。『○○妻』の献身的な愛と過去の過ち、『美しき罠』のダブル不倫でドロドロの関係は、こちらも”80年代への回帰”というイメージ。今後も女性上位、80年代への回帰、ドロドロの恋愛・夫婦ドラマが続くかもしれない。

■ポイント3 最終回のバッドエンドに大反響

コラム「『相棒』『○○妻』『ウロボロス』がまさかの結末に……バッドエンド連発とバッシングの背景とは?」で書いたように、いつになく後味の悪い結末が続いた今クール。

最悪の結末となった『相棒』『○○妻』『ウロボロス』以外でも、お金の呪縛から逃れられなかった『銭の戦争』、小さなクレームから閉店に追い込まれた『問題のあるレストラン』、まだまだ不倫が続きそうなムードの『美しき罠』も、ハッピーエンドとは言えない。

一方、伏線を見事に回収し、ハッピーエンドで終わった『デート』『ゴーストライター』への評判が上がるという反動も見られた。また、当初はタイムスリップの設定に疑問の声が多かった『流星ワゴン』も見事なハッピーエンドで、「見てよかった」の声が続出。「3カ月もの間、見続ける連ドラは納得のいく結末であって欲しい」という視聴者の声は間違いなく高まっている。

ただ、結末がハッピーエンドばかりではつまらない。少なくとも制作サイドは、「単なるハッピーエンドにはしたくない」「ハッピーエンドの方がウソくさい」という気持ちがあるものだ。それだけに視聴者のニーズは分かっていても、少しずつ角度を変えながら、さまざまなエンディングを見せてくれるだろう。

以上を踏まえた上で、今クールの最優秀作品に挙げたいのは、異色の恋愛ドラマ『デート』。攻めの姿勢を貫いた古沢良太の脚本はさすがであり、特に最終回は、電車の切符や『アダムとイヴ』のリンゴと蛇など、大納得の伏線回収。変人カップルと普通の人たちとのコントラストを際立たせた演出も光っていた。

シーソーのように入れ替わる2人の苦悩を描いた『ゴーストライター』が双璧。タイトルで誤解されることもあっただろうが、主演コンビの静かな熱演や、陰影ある映像美など、見どころは多かった。

一方、ウラ最優秀作品は『まっしろ』。「玉の輿」や「女のバトル」など複数掲げたテーマがぼやけたまま進み、最後まで何が言いたいのか分からなかった。

また、『出入り禁止の女』は、内容よりも放送そのものに問題アリ。一週間飛ばしたり、2話一挙放送したり、2月で終わらせてしまったり……キャストやスタッフがかわいそうだ。

【最優秀作品】『デート』 次点-『ゴーストライター』
【最優秀演出】『風の峠』 次点-『デート』
【最優秀脚本】『デート』 次点-『ゴーストライター』
【最優秀主演男優】長谷川博己(『デート』) 次点-中村雅俊(『風の峠』)
【最優秀主演女優】中谷美紀(『ゴーストライター』) 水川あさみ(『ゴーストライター』)
【最優秀助演男優】高橋和也(『風の峠』) 次点-松尾諭(『デート』)
【最優秀助演女優】坂井真紀(『怪奇恋愛作戦』) 次点-本田望結(『警部補 杉山真太郎』)
【最優秀新人】広瀬すず(『学校のカイダン』) 清野菜名(『ウロボロス』)
【ウラ最優秀作品】『まっしろ』 次点-『出入り禁止の女』

●「視聴率や俳優の人気は一切無視」で全20作品をガチ採点
各作品のひと言コメントと採点(3点満点)

○『警部補・杉山真太郎~吉祥寺署事件ファイル』月曜20時~ TBS系

出演者:谷原章介、要潤、本田望結ほか
寸評:20時代の刑事モノらしく、東映制作らしい人情に重きを置いたドラマ。ストーリーの軸足は常に家族であり、同枠の視聴者層を強く意識していた。このところ超人や変人の刑事が多かっただけに、”普通の人”が主人公を務める作品は、むしろ新鮮。初主演の谷原はいつも通りの好人物という印象で、役のハマリ具合は微妙。珍しく善良な役の要や子役の熱演は光った。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】

○『デート~恋とはどんなものかしら』 月曜21時~ フジテレビ系

出演者:杏、長谷川博己、国仲涼子ほか
寸評:「誰も共感できない」主演コンビの設定ながら、周囲の人々を普通の人格で固めることで、「応援せずにはいられない」「ほっこりしてしまう」ムードを作っていた。徹底したキャラ造形で、現代の恋愛や婚活における矛盾をオブラートのように包み込んでいたのも印象深い。作り込まれた脚本と、オープニングを筆頭に思い切りのいい演出が、高次元でマッチしていた。
採点【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆☆】

○『ゴーストライター』火曜21時~ フジテレビ系

出演者:中谷美紀、水川あさみ、田中哲司ほか
寸評:既視感の強いテーマを丁寧に掘り下げた脚本が秀逸。抑えに抑えたセリフで、次々に立場が入れ替わる2人の心境を表現していた。暗く深い世界観をやわらげる光を使った映像美も見事。田中、キムラ緑子、石橋凌ら最小限に抑えた脇役にもしっかり見せ場が用意されていた。同枠は今作で消滅するが、評判や視聴率に左右されず、最後まで狙いを貫いた姿勢は立派。
採点【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆☆】

○『銭の戦争』火曜22時~ フジテレビ系

出演者:草なぎ剛、大島優子、木村文乃ほか
寸評:終始、韓国ドラマ原作らしく、分かりやすさを前面に押し出し、連続ドラマらしいドキドキ感を保った。嘔吐物を手ですくうなどの過激な演出を一度きりでやめたのは、視聴率的にはファインプレーだが、「戦争」という観点では物足りなさも。表情筋の動きが少ない草なぎと木村にとってこの役はハマリ役かも。主人公が大金を得る謎のラストカットに続編の香りアリ。
採点【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

○『まっしろ』火曜22時~ TBS系

出演者:堀北真希、志田未来、高梨臨ほか
寸評:「白い大奥のバトル」「セレブ病院で玉の輿狙い」のコンセプトが空回り。バトルはほとんど見られず、セレブ病院の描写も水商売のようなサービスばかりだった。最終回も何を描いてフィナーレとしたいのかが見えず。『梅ちゃん先生』でひと皮むけたと思われた堀北がアイドル風演技に戻していたのは疑問。『昼顔』の脚本家・井上由美子も含め、誰も得しない結果に。
採点【脚本☆ 演出☆ キャスト☆ 視聴率☆ 総合☆】

○『全力離婚相談』火曜22時~ NHK

出演者:真矢みき、上地雄輔、舘ひろしほか
寸評:いまだに再放送される名作『離婚弁護士』を思わせるキャスティングだが、真矢らしい熱さの宿ったハートフルな物語に終始。地味なテーマながら、毎話さまざまな夫婦のすれ違いや、隠された思いなどを繊細に表現していた。大須商店街の風景や、名古屋弁の女優・山田昌などは、NHK名古屋制作ならではの趣向。今後もドキュメンタリーのような作風に期待したい。
採点【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】

○『○○妻』水曜22時~ 日本テレビ系

出演者:柴咲コウ、東山紀之、黒木瞳ほか
寸評:『家政婦のミタ』チームらしいミステリアスなヒロインと、脅迫などの強硬な行動で視聴者をつかんだが、過去の罪が明かされてから失速。中盤で早くも、普通の夫婦愛を描いたドラマに変わってしまった。たたみかけるセリフや、伏線の張り方などはさすがと思わせたが、「究極のラブストーリー」と掲げたドラマ結末が、暴漢による唐突な事故死ではやりきれない。
採点【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

○『残念な夫。』水曜22時~ フジテレビ系

出演者:玉木宏、倉科カナ、岸谷五朗ほか
寸評:「産後クライシス」というタイムリーなネタに、夫婦や育児の「あるある」を絡めた生活情報番組っぽい作り。それだけにもう少しネタ数や、夫のダメさを際立たせる作り込みが欲しかった。キャスティングからカメラワーク、美術まで、スタッフの美意識がテーマの焦点をぼかしていた印象。ユニコーンの楽曲はどれもポップで、メリハリに欠けるミスリードか。
採点【脚本☆ 演出☆ キャスト☆ 視聴率☆ 総合☆】

○『出入り禁止の女~事件記者クロガネ』木曜20時~ テレビ朝日系

出演者:観月ありさ、財前直見、小林稔侍ほか
寸評:観月は「24年連続主演」のギネス記録を更新する形で記者役に挑んだが、視聴率・評判ともに厳しく、わずか6回の放送で終了。しかも5回と6回は「同日2時間連続放送」という午後の再放送を思わせる扱いを受けるなど散々だった。内容としては極めてオーソドックスな事件モノであり、シンプルな謎解きも同枠らしかっただけに、ここまでの苦戦は想定外だろう。
採点【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆ 視聴率☆ 総合☆】

○『風の峠』木曜20時~ NHK

出演者:中村雅俊、桜庭ななみ、柴田恭兵ほか
寸評:中村、柴田、高橋和也の3人がとにかく熱かった。殺陣のシーンは少なく、圧倒的に人間ドラマ重視。江戸時代の架空の藩という設定だが、武士や農民が懸命に生きる姿だけでなく、悪人にも大義を持たせるなど、「きっとこういう人々がいたんだろうな」と思わせるリアルさが随所に。民放の時代劇連ドラが消滅した今、これほどの良作を見られる同枠の価値は高い。
採点【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆☆】

○『美しき罠~残花繚乱~』木曜21時~ TBS系

出演者:田中麗奈、若村麻由美、青柳翔ほか
寸評:2つの不倫をベースに、男を奪い合う女の物語を描いていたが、最後まで男性たちの魅力は描かれず。なぜ田中と若村はバトルしなければいけないのか? 核になるところが伝わってこなかった。嫉妬や悔しさの演出が極めて昭和的だったのは狙いだろうが、シリアスさをそいでいた感も。昼ドラ寄りのドロドロか、『昼顔』寄りのドキドキか、どちらつかずの印象に。
採点【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆ 視聴率☆ 総合☆】

○『DOCTORS3~最強の名医』木曜21時~ テレビ朝日系

出演者:沢村一樹、高嶋政伸、比嘉愛未ほか
寸評:シリーズ3作目を迎え、完全に相楽と卓ちゃんを別々で楽しむダブルスタンダードなドラマに。もちろん医療ドラマの側面はあるが、基本はスーパードクターとダメドクターの描写メインに振り切った。全体のテーマや、「なぜ相楽が堂上総合病院にこだわるのか?」などの深掘りがないのは残念な気もするが、幅広い年代からの安定人気も含め、4作目は決定的。
採点【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

○『問題のあるレストラン』木曜22時~ フジテレビ系

出演者:真木よう子、東出昌大、二階堂ふみほか
寸評:『最高の離婚』スタッフだけに高品質な会話劇が予想されたが、意外なほどあっさり。最後までセクハラ・パワハラの強烈な印象を上書きするような名ゼリフは聞けなかった。東出、二階堂、高畑充希、松岡茉優、菅田将暉らズラリそろえた若手キャストも持ち味を出したとは言い切れず。小さなクレームで店を閉める展開まで、疑問やモヤモヤが頭をよぎっていた。
採点【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆】

○『保育探偵25時~花咲慎一郎は眠れない!!』金曜20時~ テレビ東京系

出演者:山口智充、黒谷友香、鹿賀丈史ほか
寸評:保育園が舞台というだけあって、「離婚と子ども」「娘を捨てた母」「パパに会いたい男の子」などの定番に加え、「シングルマザーの貧困」「育児放棄」「待機児童」など現代社会の問題点もカバー。芸人の山口が主演のためか、とにかく分かりやすい展開が続き、それが裏目に出たのか、ゴールデンのドラマ史上ワーストの視聴率に。新スター候補・真剣佑の次作には期待。
採点【脚本☆ 演出☆ キャスト☆ 視聴率☆ 総合☆】

○『ウロボロス~この愛こそ、正義。』金曜22時~ TBS系

出演者:生田斗真、小栗旬、上野樹里ほか
寸評:警察の不正を暴く展開、黒幕が警視総監、主演コンビが死ぬラストなど、マンガ原作らしい「良く言えば直球勝負、悪く言えば既視感が強い」物語に終始。アクションシーンや画角のスケールにこだわりが見えただけに、脚本とのアンバランスを感じた。吉田鋼太郎、吉田羊、滝藤賢一ら旬の脇役は主演級の存在感を見せたが、それだけにまとまりを欠いたとも言える。
採点【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

○『セカンド・ラブ』金曜23時15時~ テレビ朝日系

出演者:亀梨和也、深田恭子、生瀬勝久ほか
寸評:「夜メロ」とうたった大人の恋愛は、エロではなく、美しさ重視。「しよう」が飛び交うセリフではグイグイ攻めていたが、ビジュアル的にはキスシーン程度で見せ場らしいものはなし。2月スタートで全7話だったため、周囲の人々を絡めた人間ドラマを描けなかったのが悔やまれるところか。亀梨はダンサーに、深田は教師にしっかり役作りしていたのは好印象。
採点【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆】

○『怪奇恋愛作戦』金曜24時12時~ テレビ東京東系

出演者:麻生久美子、坂井真紀、仲村トオル
寸評:演劇界の雄・ケラが手がけた脚本・演出は、全編脱力モード。「これでもか」というくらい小ネタを詰め込みつつ、メッセージ性は全くなし。全員が最終話の前編で死んでしまうなど、ツッコミどころの宝庫だった。ヒロイントリオは美ぼうを封印し、見事なコメディエンヌぶりを披露。難しい2話完結へのトライなど、ゆるゆると攻め続ける同枠の魅力を再認識した。
採点【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

○『学校のカイダン』土曜21時~ 日本テレビ系

出演者:広瀬すず、神木隆之介、浅野温子ほか
寸評:序盤から中盤までは肝となるスピーチの説得力が今ひとつで、スクールカーストや「プラチナ8」の設定が浮いてしまう形に。しかし、回を追うごとに広瀬のセリフ回しに力強さが生まれ、最終回は全員を包み込む圧巻の演技。石橋杏奈や杉咲花ら若手実力派女優も脇から華を添えていた。今やめっきり減った学園ドラマを見られる同枠は、貴重な存在となっている。
採点【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

○『限界集落株式会社』土曜21時~ NHK

出演者:反町隆史、松岡茉優、谷原章介ほか
寸評:テーマである「限界集落」「無農薬農業」に特化し、余計なサイドストーリーはなし。「大事なのはお金よりも人」と言い切るラストはすがすがしく、力強かった。自然と農業、そこに生きる人の素晴らしさを押しつけることなく、静かに描いたのはNHKならでは。同局のアイデンティティを感じる良質なドラマだった。ただ、モデル体形の反町&谷原が風景とミスマッチかも。
採点【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆☆】

○『流星ワゴン』日曜21時~ TBS系

出演者:西島秀俊、香川照之、井川遥ほか
寸評:前期で設定の似た『素敵な選TAXI』が放送される不利がありながらも、父子の愛を前面に押し出し、終盤は怒とうの人間ドラマで感動を呼び込んだ。濃厚な演技とパーツアップの多用はいかにも『半沢直樹』チームらしく、西島の新たな一面を引き出す効果も。ただ主演はどう見ても、破天荒なオヤジを3世代にわたって演じた香川。強烈キャラの陰で名言を連発していた。
採点【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。

(木村隆志)

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