政治そのほか速
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第51回江戸川乱歩賞を受賞した薬丸岳のデビュー作『天使のナイフ』が、刊行から10年の時を経てテレビドラマ化された。14歳以下は刑事責任能力を問われない「少年法」の壁を題材にした、社会派ミステリーの傑作だ。
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生後5カ月の娘の目の前で妻を殺した犯人は、13歳の少年3人だった――。妻を殺されシングルファザーになった<桧山貴志>を演じるのは、若手筆頭の演技派として知られる小出恵介。事件から4年後、自立支援施設を出て自由になっていた少年の1人が殺され、世間は<桧山>に疑惑の目を向ける。「国家が罰を与えないなら、自分の手で犯人を殺してやりたい」。メディアを通じて、彼がかつてそう言い放っていたからだ。
<桧山>の喫茶店で働くアルバイト役には、アイドルグループ・乃木坂46の桜井玲香、西野七瀬、松村沙友理が抜擢された。3月15日放送の次週(第4話)では、桜井演じる<仁科歩美>がこの物語のキーマンとなって、驚愕の真相も明かされる。なぜ桧山の店で働くことになったのか、犯人グループとの関係は!? そんな誰にも明かせない闇を抱えた少女を桜井はどう演じたのか? 原作小説に対する思い、自身の読書傾向についても話を聞いた。
●びりびり空気が震えているのを感じました
――オーディションで掴んだ役だそうですね。
これは喜ぶべきなのか分からないですけど、監督には「一番悪そうじゃなかったから」と言われました(笑)。原作を読んでいく中で「もし自分がやるんだったら、この女の子を演じたい」と思っていた役だったので、決まった時はすごく嬉しかったですね。私、戦隊ものでいうとブラックあたりが好きなんです(笑)。お話の折り返しあたりで出てくる、味方か敵か分からない、何か重たい過去を持っている感じが好きなんですよ。
――桜井さん演じる<歩美>は、とある事件のせいで、暗い闇を抱えてしまった少女です。難しい役だったのではないですか?
そうですね。複雑な感情を隠して、店では普通に笑って、接客していなきゃいけない。明るい高校生でいなきゃいけないというのがすごく難しかったです。
――役を演じるうえで、どんなことを考えた?
どのシーンでも、「自分がもし同じ状況になったら?」ということを前提に考えていました。終盤で<歩美>が大きな行動を起こすシーンでは、<歩美>の気持ちを一番に考えつつも、自分が普段の日常で生活をしていて溜まっているものをここぞとばかりに「出してやろう!」という思いで演りましたね。やっぱり、普段は出し切れずに、ぐっとこらえなきゃいけないことがたくさんあるので……。
――こらえているんですね。
でも(乃木坂46の)みんなからは、「玲香は分かりやすいよね」とよく言われます。「機嫌が悪い時はすぐ分かる」って(笑)。自分では隠してるつもりでも、気持ちが表面に出やすいタイプみたいです。
――それを思い切り外に出したのが、<歩美>が大きな行動を起こすシーンだった、と。喫茶店でアルバイトをしているシーンとのギャップは、このドラマにとって見所のひとつになっているようですね。
登場人物みんなが、感情を一気にぶつけ合うシーンなんですよ。周りがベテランで素晴らしい役者さんばかりだったんですが、そういう方々がお芝居で感情を爆発させると、こんなにも迫力が出るんだってびっくりしました。びりびり空気が震えているのを感じました。
●ただ残虐な事件を描いているわけではない
――原作は、いわゆる「社会派ミステリー」です。普段あまり触れないジャンルではないですか?
私は普段、もっとフィクションの割合が高いというか、作られた世界の物語を読むことが多いんです。こういった自分たちにとって身近な現実の、リアルな題材を扱っているものって、あまり読んだことがなかったかもしれないです。もっと積極的に取り入れるべきだなと思いましたね。知らなかったことを知ることができるし、考え方や視点も変わる。現実の自分の生活に、本が直接影響を与えてくれることもあるんだなって思ったんです。
――シリアスで重たいテーマ設定でしたが、戸惑いはありませんでしたか?
実は高校の時に、社会科の課題で少年犯罪について調べたことがあったんです。興味があったというか、「知りたい」と思い自分で選んだテーマでした。ただ、その時はどういう事件があって未成年だから裁かれなくて……という事実を調べていっただけでした。ただ怖いというか、ただひどいなって感じることしかなかった。ひとつの事件が起きた時に、被害者の家族の人たちはどんな思いを抱いたのか、加害者の側はなぜそんなことをしてしまったのか。事件に関わる人々の内面的なことについては、この小説を読むことで初めてちゃんと想像することができたんです。
――高校時代には見えていなかったことが、見えるようになったわけですね。
正しいか正しくないかは別として、罪を犯してしまう人には、何かしらの理由があるんですよね。この小説は、ただ残虐な事件の物語を書いたというだけではなくて、いろいろな立場の、いろいろな人の心情が細かく書かれています。みんなの気持ちが分かれば分かるほど、答えを簡単に口にすることはできなくて……。難しい問題だなと改めて思いました。現実のニュースなども目にしながら、今も自分なりに考え続けています。
●本を読むことで、「人間」を知りたいんです
――普段の読書について聞かせてください。本はよく読まれますか?
はい。ふらっと本屋さんに行って、「これ面白そう!」と思ったものを手に取ることが多いです。最近読んだ本は、『どこの家にも怖いものはいる』(三津田信三)。背筋が凍る、不安な感じが延々と続くんですよ。基本的に、ダークなのが大好きなんです(笑)。
――ダークな本で、その他にオススメは?
あさのあつこさんの『No.6』は、読み終わった後のずーんという後味が最高でした。2人の少年(紫苑&ネズミ)の掛け合いがすごくイイんです。お互いが思い合ってるようでいて、でも切り離そうと思えばいつでも切り離せる関係で、それでも見えない何かで繋がっていて……最後にずーん、と(笑)。あさのさんの作品だと、『福音の少年』も好きですね。『天使のナイフ』に近い部分があるかもしれない。少年達が事件を起こして人を殺しちゃうんですけど、事件が起きるまでにいろんな人との絡みだったり、理由だったりが深くあって。悪いことをしてるはずなのに、その二人の気持ちがわかっちゃうから、否定し切れない。
――その感触は確かに、『天使のナイフ』に近いですね。
生死に関わる罪を犯してしまう時って、人間が持っている感情の究極ですよね。そこを知ることで、人間のことを知りたいんだと思います。もっと突き詰めていこうと思いますね。
――そこを突き詰めつつ、女優の夢を追い掛けつつ、ですね。
そうですね。あとは、乃木坂46のキャプテンとしてしっかりみんなのことをまとめていきたいです。周りからは「ポンコツキャプテン」って言われるんですけど(笑)、私が女優として作品に出ることで、それを観た方が乃木坂46に興味を持ってくれるかもしれない。自分の夢と、メンバーみんなの夢を、一緒に叶えられるように頑張っていきたいです。
――ところでインタビューを始めた頃、ちょっと不安げな表情だった気がしたのですが……。
バレていましたよね(笑)。私、『ダ・ヴィンチ』さんは高校の図書館でいつも読んでいた雑誌なんです。うちの学校はすごく厳しくて、図書館には本しか置いてなかったのに、『ダ・ヴィンチ』だけは毎月読めたんですよ。だからすごく思い入れがあって、今日取材をしていただけるって聞いて楽しみだったのに、昨日家族と一緒に『天使のナイフ』の第二話を観ていたら、お父さんが私の演技について文句を言ってきて! なんにも知らないくせに……と思いつつ、私も反省しなきゃなと思っていた、痛いところを微妙に突いてくるんですよ。だからすごく落ち込んじゃって……。でも、お話ししていたら元気になりました(笑)。もう一回自分なりにどこが良くてどこが良くなかったのか、映像をちゃんと観返して、次に繋げていきたいって気持ちでいっぱいです。
取材・文=吉田大助 写真=中惠美