西村健太朗と澤村拓一をそれぞれ先発と抑えに入れ替えるなど、開幕（27日）を間近に控えて、あの手この手でリーグ4連覇を目論む巨人。評論家諸氏による順位予想も「巨人4連覇」の声が圧倒的に多いが、ここにきて早くも原監督の今シーズン限りの勇退が囁かれているという。

「『一人の監督が長く続けるのはいかがなものか』というのが、原監督の半ば口癖になっている。実際、『マンネリ化はチームの志気を落とす』も口癖の一つで、これまでのシーズンも打順を大幅に入れ替えたり、先発に若手を抜擢したりと、手を替え品を替えて闘ってきた。監督生活も12年目に入ったし、今季は2年契約の最終年。優勝しようがしまいが、今季限りの勇退の可能性は極めて高い」（担当記者）

　そこで水面下で動き出しているのが、次の監督探しだという。

●フロントサイドの“大本命”は松井だが……

　巨人の監督は、チーム生え抜きのスターでなければならないという不文律がある。その不文律から言えば、メジャー挑戦で一旦は巨人と決裂したとはいえ、松井秀喜氏が次期監督候補の超目玉であることに変わりはない。

　一昨年（2013年）の、恩師・長嶋茂雄氏との国民栄誉賞のダブル受賞そのものが、読売が仕掛けた次期監督就任への壮大なデモンストレーションだったとも言われている。

「しかし、松井氏は『今の最大の関心事は育児』と口にしており、監督就任にはまったく無関心だ。拠点もニューヨークに置いたままで、用事があるときに来日するだけ。昨年のキャンプで巨人の臨時コーチをしたときは、『打撃だけじゃく、チーム全体を見てほしい』と要請されたが、結局、ブルペンを一回見たぐらいで、ほとんど打撃陣しか見なかった。しかも、何か質問されたときだけ答えるというスタンス。松井氏の中には『ちゃんとした打撃コーチがいるので、ポッときた自分があれこれ指導するべきじゃない』という考えがあった。今年のキャンプでも臨時コーチを打診されたが、これを松井氏は断っている。恩師の長嶋氏からは『コーチ経験がなくても監督はできる』と説得されているようだが、原監督の次となれば、可能性は0％に近いだろう」（巨人軍関係者）

　こうなると、原監督の後釜は松井氏以外の生え抜きスターに限られてくる。監督候補として内々に名前が挙がったのが、主に以下の面々だという。すなわち、高橋由伸、江川卓氏、吉村禎章氏、桑田真澄氏、川相昌弘ヘッド。他に、生え抜きではないが、一時期巨人に在籍した落合博満氏の名前も挙がったこともある。

●“消去法”で高橋由伸のセンが濃厚か

　この中で、二軍監督時代に坂本や脇谷（現・西武）を育てたものの、指揮官としての評価がそれほど高くない吉村氏、渡辺恒雄球団会長が「タレント」と位置づける江川氏、さらにかつての登板日漏えい疑惑のダーティイメージがいまだ払拭されずにいる桑田氏は、早々と候補から脱落したという。

「現時点で次期監督候補の最有力が、ナベツネ（渡辺会長）も『将来の監督』と明言する高橋だ。選手としては一匹狼的存在。今季から打撃兼任コーチに就任させたのも、その一匹狼から脱して帝王学を学ばせるため。その高橋が仮に時期尚早となれば、経験と知識が豊富な川相ヘッドが、“繋ぎ監督”になる可能性もあるが、監督としては存在がやや地味。この川相ヘッドと高橋が見送られた場合、落合氏が大番狂わせで監督になるかもしれない。ただし、彼は中日の監督時代、マスコミと冷戦状態を続けたし、マスコミ対応に過敏なフロントとしては、できれば避けたいところ。松井氏の監督就任に関しては、恩師の長嶋氏がシーズン中にも説得を再開するはずだが、やはり原監督の後釜は高橋という線が有力だろう」（前出・記者）

　今シーズンオフ、はたして「高橋巨人」の誕生はあるのか。

（取材・文／高橋智夫　Photo by Ship1231 via Wikimedia Commons）