政治そのほか速
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ミニバン界のトップをひた走るアルファードとヴェルファイアがフルモデルチェンジ!
両車とも、いかつさを増した大胆なフロントビューをはじめ、走行&環境性能のアップ、スーパーロングスライドシートとエグゼクティブラウンジによる“おもてなし空間”の充実、世界初のパーキングアシストなど“進化”が盛りだくさん!
* * *
「これが新しいアルファードですかぁ!?」に始まり、「室内を見せてください!」「写真いいすか?」と、仕事柄、ホヤホヤの新車で街に繰り出す機会は多いが、こんなに声をかけられたのはホント久しぶり。
新型アルファード/ヴェルファイア(以下、アルヴェル)は、路肩に止めているだけで囲まれてしまう。「手は触れないでくださーい。見るだけですよ。撮影は順番で~」とこっちはさしずめアイドルのマネジャー気分である。
実際、アルヴェルは売れている。公表される登録車販売台数ランキングは、例えば2012年の年間販売はアルヴェル合計で10万台弱。これは実質的に全体6位に相当する台数だ。さらに翌13年も合計8.5万台近くを売り上げて実質8位、モデル末期となった昨年ですら合計6.2万台以上で実質12位なのだ。
現在の国内新車市場におけるトップ10銘柄は200万円以下中心のコンパクトカーか、せいぜい200万円台半ばの5ナンバーワンボックスカーばかり。その中でアルヴェルだけが300万円台後半から400万円台メインという高価格にもかかわらずトップ10常連となっている。
最近の国産新車は「効率」だの「グローバル化」だのと、クルマ自体が地味で薄味であることの言い訳(?)が目立つが、新型アルヴェルは正反対。気持ちいいほどのパワープレーと物量作戦で圧倒する。
まず外観デザインは厚顔かつギラギラの極致! 特にアルファードはオゲレツなド迫力!!
先代ではずっとヴェルファイアの販売が優位だったので、「今度はアルファードも派手に!」が販売現場の切なる願いだったらしい。
ボディも前後左右とも大きくなった。全高だけは先代比で10mm低くなったが、これは「カッコいい箱形のバランスを追求した結果」であって、間違っても「低重心にして、燃費と操縦安定性を…」みたいな小利口な理屈ではない。事実、開発担当氏は「周囲を見下ろす“上から目線”こそアルヴェル最大の魅力でしょ?」とニヤリ。
室内調度もテカテカ木目調とギラギラ金属調のオンパレード! 特に驚くのはダッシュボードが全グレード革張り調であることだが、これがなんと縫い目まで精密に再現した樹脂成型品。それ以外も本物の木や金属ではなく、あくまで「調」なのだが、これだけ大面積の「○○調プラスチック」をアラなく仕上げきる職人技は、ある意味で本物の木目やアルミより感心する。
シートアレンジの種類も膨大だ。売れ筋の7人乗りのセカンド独立キャプテンシート(ひとり掛けでひじ掛け付きの上等なシート)は新設計。そして左側の助手席/セカンド/サードの各シートが、フロア前後をほぼ貫通するように敷かれたレール上をスライドするのは圧巻だ。
中でも助手席が2列目シート付近までガバーッと下がる「助手席スーパーロングスライド」は今回の目玉で、先代開発時から温めてきた悲願のアイデアとか。
この助手席スーパーロングスライドは子供もおらず(泣)、友達も少ない(号泣)筆者にはどう使うのかサッパリ…だが、開発陣によれば「例えば助手席にママが座ると、運転席のパパと2列目の子供のお世話ができます。また3列目まで左右シートをジグザグに配置できるので、室内の一体感もこれまでにないレベル」とのこと。
そう聞くと、助手席にマドンナ的な女のコが座って、微妙な三角関係にあるオトコどもが乗り合わせてもケンカせずに済むかも…と妄想は膨らむ。
もうひとつの新シートは、これまで「新幹線グリーン車並み」をうたっていた2列目エグゼクティブパワーシート(もはや、社長車や政治家用として定番)がさらに進化して「ちょっとした国際線ビジネスクラス並み」に広く豪華になった「エグゼクティブラウンジシート」である。
このシートは周囲の室内調度も特別豪華に飾った「エグゼクティブラウンジ」というグレードだけの専用シート。しかも「オプションを追加して…という面倒臭さもなくして、最初からフル装備」にしたことで価格は実に700万円超!(ハイブリッドの場合)。これはセンチュリーや(燃料電池車の)ミライといった特殊車を除けば、トヨタブランドの最高価格車となる。
さらに言うと、従来型エグゼクティブパワーシートも「副社長用(?)」として残されているし、2列目がベンチシートの8人乗りも健在。パワートレーンも4気筒、ハイブリッド(は全車4WD)、V6…の3種のまま。つまり、これだけ大量の新機軸を投入しても先代から実質何も捨てていないパワープレー!
乗り心地も同様だ。「高級サルーンとして見ると、先代は2列目の乗り心地がダメだった」とは開発陣自ら認めるところ。で、新型はリアサスペンションに贅沢(ぜいたく)なダブルウィッシュボーンを新開発。さらにボディ剛性を大幅アップして遮音・吸音材も投入。その結果、新型アルヴェルが「じんわり、しっとり、ゆったり」という典型的高級車の乗り心地になったことは、乗った瞬間にわかる。
エンジンの進化も著しい。安価で売れ筋の4気筒エンジンがまったく新しい2.5L(従来は2.4L)になったことで、動力性能の余裕も静粛性もハッキリと向上。そりゃあハイブリッドのほうが静かだし、高速での伸びは3.5LのV6に分があるが、その格差は先代より確実に縮まった。また、都市高速や山道などでは、ハイブリッドやV6がいかにも「どっこいしょ」な重い足取りなのに対して、もともと軽量な2.5Lは曲がりも素直で軽快だ。
燃費はもちろんハイブリッドが一番いいが、新エコカー減税を考慮に入れたハイブリッドの実質購入価格は、2.5Lの4WDより約60万円、2WDより85万円ほど高い計算になる。この価格差をハイブリッドの好燃費で浮くガソリン代で取り返すには10万km以上の走行距離が必要だろう。
「ハイブリッドを買う予算があるなら、あえて2.5Lにして、差額をグレードアップやオプション追加に充てるのもアリ」が正直な印象である。
大排気量のV6は今どき後ろめたい気もするが、「V6をやめようとは一度も考えませんでしたね。カスタム系を選ぶ人たちにV6は根強い人気ですし」と、語ったチーフエンジニアのY氏の愛車も、初代アルファードのV6の4WDだそうである(近々新型に乗り替えるんだろうけど)。
やりたいことは全部やる、欲しがる人がいるなら迷わず造る…という新型アルヴェルは、まさに“勝ち組”らしい商品企画である。
これ以外にも「一応、ライバルといえるのは日産エルグランドですが、アルヴェルの同クラスシェアは8割」とか「今や法人需要(=企業の役員車、ハイヤー、送迎車など)でもクラウンを抜きました」など、新型アルヴェル開発氏の口から出てくるのは景気と威勢がいい話ばかり。
そして「新型アルヴェルでは、もうほかのミニバンは見ていません。性能開発の基準にしたのは、社内でいうならクラウンやレクサスLS。あとは、メルセデスSクラスやBMWの7シリーズなどもテストしました」とまで言い切った!
「日本人のクルマ離れ」だの「日本は軽自動車やエコカーしか売れない」などといわれる昨今だが、冒頭の大人気っぷりを見れば、少なくともアルヴェルだけは例外だ。「いつかはクラウン」というのはかつての名コピーだけど、今は間違いなく「いつかはアルヴェル」である。
普段はちょっと古い小型欧州車なんぞに訳知り顔で乗って気取っている私だが、人間の欲望にどこまでも忠実な新型アルヴェルには本能的にグラッときたぞ!
(取材/佐野弘宗 撮影/岡倉禎志)