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【川崎中1事件】ドヤ街、ヤクザ、貧困 ― 川崎という街から読み解く事件の真相

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【川崎中1事件】ドヤ街、ヤクザ、貧困 ― 川崎という街から読み解く事件の真相

【川崎中1事件】ドヤ街、ヤクザ、貧困 ― 川崎という街から読み解く事件の真相

 

【事件記者が綴るアナザーストーリー】

 川崎市川崎区の多摩川河川敷で中学1年の上村(うえむら)遼太君(13)が殺害された事件。少年法の改正が議論になり、一部週刊誌が、殺人容疑で逮捕された18歳の無職少年の顔写真と実名を公開するなど、大きな波紋を呼んでいる。

集団的過熱取材(メディアスクラム)の恐怖!!

 首を切りつけて殺害するという、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)と似た残忍な手口から、イスラム国が公開した処刑動画との関連を報じるマスコミもいた。中には、犯行に手を染めたとされる不良グループについて、「イスラム国」をもじって「カワサキ国」と伝えるメディアも出るなど、事件の特殊な側面が1人歩きする事態になっている。

 だが、そうした流れに違和感を抱く者もいる。

 取材に当たる全国紙社会部記者は、

「少年の残忍な一面などが注目されがちですが、そこにばかり目が行くと本質を見誤る。『川崎』という街を理解しないことには事件は読み解けないんですよ」と話す。

 上村君の遺体が遺棄されていた現場は、京急大師線鈴木町駅から約500メートル離れた場所にある多摩川河川敷。「夜中には、不良グループが集まるたまり場となり、夏場にはそこで泳ぐなどして遊んでいた」(地元住民)というその場所のほか、事件の舞台となった一帯を歩くと、街の"もう1つの姿"が次第に顔を覗かせる。

「現場近くの河川敷には、トタン屋根の住宅が立ち並ぶ集落がある。住民は日雇い労働者や在日外国人がほとんどで、なかには住民登録していない者もいる。さらに、上村君の衣服が燃やされたトイレがある公園周辺には、在日外国人が集まる集落やヤクザの事務所も点在している。治安がいいとはいえない土地柄だ」(先の住民)

 オウム事件の「最後の指名手配犯」だった高橋克也が、建設作業員に偽装し、17年にわたって潜伏生活を送ったのもこの界隈だった。付近の京急八丁畷駅付近には、「日進町」と呼ばれる「ドヤ街」もある。ホームレスや社会からドロップアウトした者たちを食い物にする「貧困ビジネス」が蔓延る一角だ。

 こうした街の風景から見えてくる事件の背景には、「貧困」というキーワードが浮かび上がってくる。

「逮捕された少年たちも上村君も決して恵まれた環境にはいなかった。主犯格とされる18歳少年は、フィリピン人の母親とトラック運転手の父親とともに暮らしていたが、生活は楽ではなかったという話です」(先の記者)

 被害者の上村君にも「貧困」の影がつきまとっている。

「上村君は島根県の離島で小学校6年まで過ごしましたが、両親が離婚。母親に引き取られて川崎に移っています。女手ひとつで家計を支える母親は、仕事に忙殺され、子どもの面倒を満足に見れる状況ではなかったようです」(同)

 ただ、そんな境遇にあっても上村君は得意のバスケットボールで、存在感を発揮。前向きな性格が周囲から慕われるなど、逆境を跳ね返すメンタリティーの片鱗を覗かせていた。

 それに対して18歳の少年は上級生や同級生から疎まれ、「いじめのターゲットにされたこともある」(先の住民)という。学校生活で挫折を経験し、自らの力を誇示できる上村君ら下級生を従えるしか、自尊心を保つ術はなかった。
 
「(上村君が)みんなから慕われていると思い、ムカついた」

 18歳の少年は上村君殺害の動機をこう供述したという。ドン底の状況に取り残されてしまう恐怖が、少年を凶行に駆り立てたのかもしれない。
(文=KYAN岬)

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